ベトナム語をかじって、誰しもがぶつかるのは発音の難しさの壁です。
習った通りに発音しているのに、ベトナム語で話しかけると「hả?」と聞き返される。相手の言葉も、思ったように聞き取れない。そんなもどかしさを感じていませんか。
正直に言うと、ベトナム語がうまい人の中には、センスだけで一発で聞き分け、言い分けられる人がいます。でも、それはごく一部です。多くの人は、聞いただけでは違いが分かりません。
だから、この記事では感覚に頼らず、「どこを聞けばいいか」を先に決めます。聞くところは4つだけ。それが分かれば、センスがなくても、手本との違いが見つけられるようになります。
一つの音節は「声調」「母音」「語末音」「語頭子音」の4つでできているので、手本と自分の録音を聞き比べて、この4つのどこがずれているかを確かめます。
タイベオ先生この記事では、北部・ハノイの発音を手本にします。南部の音を学んでいる方は、手本にする話者の地域をそろえてください。地域による違いは、ベトナム語の方言の記事で紹介しています。
発音のチェックをする際に、音声付きのベトナム語テキストを1冊用意しましょう。もしまだ持っていなければ以下のテキストは使いやすくておすすめです。
ベトナム語の独学におすすめの本
ベトナム語の発音のコツは、手本と違う音を一つ見つけること
「ベトナム語の発音をよくしたい」と思っても、言葉全体を何となくまねするだけでは、どこを直せばいいのか分かりにくいものです。
まずは、今日使いたい言葉の中から、気になる音節を1つ選びましょう。
ポイントは「手本と違う音を、1つだけ見つける」こと
音節の中を4つに分けて見る
ベトナム語の1つの音節は、声調、母音、語頭の子音、語末の子音などが組み合わさってできています。
手本を聞いて、自分の声を録音し、次の4つから気になるところを探します。
| 確かめるところ | 自分に聞いてみること |
|---|---|
| 声調 | 音の高さや動きは、手本と同じ?最後だけ勝手に上げていない? |
| 母音 | 口の開きや唇の形を変えるべきところを、同じ「エ」「オ」で読んでいない? |
| 語末の音 | 最後に余計な「ム」「ク」「ト」を足していない?鼻に響く音まで消していない? |
| 語頭の子音 | t と th の息の出し方を、同じにしていない? |
どこから直すかは、手本と違うところによって変わります。
1か所だけ練習する
違いが見つかったら、その1か所だけを、下の該当する節で練習します。
「今日は母音だけ」のように絞ると、録音し直したときに違いが聞き取りやすくなります。
文字と音が結びつかないときは
文字と音の対応が、まだはっきりしないこともあります。そのときは、先に音声つきのベトナム語アルファベット一覧を見てから、このページに戻ってきましょう。
文字と音の対応そのものがまだ曖昧なら、先に音声付きのベトナム語アルファベット一覧を見てから、このページへ戻ってきてください。
声調は、同じ音節で聞き比べる
声調を練習するときは、子音や母音まで違う単語を並べると、何が違うのか分かりにくくなります。同じつづりで、声調だけが変わる音を比べましょう。
たとえば ma は、声調を変えると次の6つになります。
ma ・ mà ・ mả ・ mã ・ má ・ mạ
| つづり | 意味 |
|---|---|
ma | お化け |
má | 頬 |
小さな記号が違うだけで、まったく別の言葉になります。
最初から6つを一息に言おうとしなくて大丈夫です。まずは、この中から聞き分けにくい2つを選んでください。
練習のやり方
- 購入したテキストの声調のページを開き、対応する音声ファイルで、選んだ二つの声調を続けて聞く。
- 文字を見ずにまねして、スマホで自分の声を録音します。
- お手本 → 自分 → お手本の順に聞きます。そして、次のどれかが違うところを1つ探します。
- 出だしの高さ
- 終わりの高さ
- 途中の声の動き
- 見つけた違いを意識して、もう一度録音します。
記号だけで覚えない
声調は、記号を見て頭の中で「上がる」「下がる」に置き換えるだけでは、なかなか身につきません。
北部の声調は、音の高さだけでなく、声の出し方(たとえば声がかすれる、のどが詰まるなど)にも違いがあります。実際の音をよく聞いて、「この音節はどんな響きで終わるか」まで確かめましょう。
慣れてきたら
1音節で聞き分けられるようになったら、短い言葉でも練習します。「ベトナム語の挨拶」の記事に、Chào anh.(こんにちは)などの練習例がたくさんありますので活用してください。

1つずつは正しく言えても、続けて話すと違う調子になっていないかを、録音を聞いて確かめてみましょう。
声調記号の形や名前を整理したい方は、ベトナム語の発音記号の記事も参考にしてください。

母音は「全部大きく開ける」ではなく、二つの差を作る
日本語のカタカナでは、e と ê はどちらも「エ」に見えます。でもベトナム語では別の母音です。「全部を大きく開ける」のではなく、2つの音の間で口の形に差をつけることが大切です。
まず、次の2つの単語を聞き比べてみましょう。子音と声調が同じなので、母音の違いだけに集中できます。
| つづり | 意味 |
|---|---|
me | タマリンド |
mê | 夢中になる |
口の形の違い
| 比べる音 | 口で確かめる違い |
|---|---|
me / mê | e は口を広めに使う。ê は舌の前を上あごに近づけて、口の開きを狭くする。 |
to / tô | to(大きい)の o は口を広く開ける。tô(鉢)の ô は唇を丸めて前に出し、開きを狭くする。 |
mơ の ơ | 「オ」と書きたくなる音ですが、ô のように唇を突き出しません。唇の力を抜いて、ô と聞き比べましょう。 |
練習のやり方
- 鏡で自分の口を見ながら、
me → mê → me → mêと交互に言います。 - 録音して、お手本と比べます。
to / tôでも同じことをします。
目標は、いつも大げさに口を動かすことではありません。2つの音で口の形がちゃんと変わっているかを確かめることです。
ポイントは「口の開きの差を作る」こと
迷ったときは
音を聞いてから、文字を見直しましょう。
テキストの母音のページを開いて、e / ê と o / ô / ơ のところにある音声ファイルを聞いてみましょう。
- 音声ファイルを聞きます。
- ページにある口の形の説明も見ながら、お手本の音と自分の声を比べます。
日本語の「エ」「オ」の読み方だけでは、どの母音か判断できないことがあります。そのときは、先に音を聞いてから、文字を見直してみましょう。
語末音は、鼻に響く音と、閉じて止める音を分ける
ベトナム語の語末で大事なのは、最後に日本語の母音(ウ・オなど)をくっつけないことです。ただし、語末の子音を全部消してしまうわけでもありません。
| 語末のつづり | 何が起きる? | 練習のポイント |
|---|---|---|
-m・-n・-ng・-nh | 鼻に響かせて終わる | 鼻に響かせて終わる 口の中を閉じても、鼻から響きを抜く。「ム」「ヌ」などを足さない |
-p・-t・-c・-ch | 口を閉じて止めて終わる | 唇や舌を最後の位置まで動かして止める。パッと開かない。「プ」「ト」「ク」を足さない |
例で確かめよう
hôm(今日の「昨日」という意味の語)の場合
最後の -m は、唇を閉じて鼻に響かせるところまでが1つの音です。
- ✕「ホム」(最後に「ム」の母音を足している)
- ✕「ホ」(最後の音を消している)
- ○ 唇を閉じて、鼻に響きを残して終わる
học(学ぶ)の場合
最後の -c は、母音のあとで口の奥を閉じて止めます。「ク」と口を開いて言い切らないのがコツです。
- ✕「ホック」(最後の「ク」を言い切っている)
- ○ 閉じたところで止める
hôm と học は、母音も声調も違う別の単語です。まずはそれぞれのお手本を聞いて、最後の止まり方だけに注目しましょう。
ポイントは「最後に母音を足さない」こと

慣れたら hôm nay、học tiếng Việt のように、次の音節を続けてみます。最後に余計な日本語の母音が一つ増えていないか、録音をゆっくり聞き直しましょう。東京外国語大学の語末音の解説でも、閉じたまま終わる音を確認できます。
t と th は、出だしの息を比べる
語頭の音で比べやすいのが t と th です。ベトナム語のt と thは最初の息の強さが違います。
t は無気音、一方thは有気音です。
t:息をあまり出さない「タ」th:息をふっと強く出す「タ」(「ターッ」と息が混ざる感じ)
どちらも日本語の「タ行」で済ませず、同じ母音を続けた ta / tha を聞き比べてみましょう。
ta は「我」、tha は「許す」という意味です。th と聞くと英語の think の音を思い浮かべるかもしれませんが、あれとは別物です。舌を歯の間に出す必要はありません。ベトナム語の th は、t のように舌でいったん息を止め、離すときの息を強める音です。
ポイントは「出だしの息の量」
練習のやり方
- 手のひらを、口の少し前に置きます。
ta → tha → ta → thaと、同じ声の大きさで言います。thのときのほうが、手に息が強く当たれば成功です。
手の感覚は補助なので、最後は東京外国語大学の発音教材の音と自分の録音を聞いて比べましょう。
練習のコツ
最初から母音や声調(音の高低)を変えると、違いが分かりにくくなります。
- まずは
ta / thaの出だしの息だけに集中する - 差をつけて言えるようになってから、普段使う単語に進む
この順番がおすすめです。
聞く、録る、一か所直す。短い言葉に戻して終える
練習する音を決めたら、まずは次の流れでやってみましょう。
- 使いたい言葉から一音節を選ぶ。 手本は同じ地域の話者の音にそろえる。北部の音なら東京外国語大学の発音レッスンを使える。
- 手本を聞いて、自分の声を録る。 カタカナを読み上げる前に、音そのものを聞く。
- 違うところを一つだけ直す。 声調、母音、語末音、語頭の息のどれかを選び、同じ音節をもう一度録る。
- 短い言葉に戻す。 単独で言えた
họcをhọc tiếng Việtの中でも言えるか確かめる。
同じ音を何度も言っているのに違いが分からなくなったら、いったん聞くだけに戻っても構いません。先生やベトナム語を話す人に聞けるなら、「どこか変ですか?」より、「今の học は声調と最後の音のどちらが違いますか?」と一つに絞って尋ねるほうが、次の練習につなげやすいでしょう。
カタカナは、最初に音を思い出す目印にはなります。ただ、声調や母音、語末の止まり方までは書き切れません。今日一つだけ選んだ音を、手本と録音で確かめる。そこから始めてみてください。









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