
ベトナム語で「ブサイク」って何て言うの?自虐ネタなら、現地の友達にも通じるのかな。
友達との軽口で使ってみたいときや、自分の写真を見て「私、ブサイクだな」と言いたくなったとき。そのまま言える一言があれば知りたいですよね。
ベトナムにも、自虐や容姿いじりはあります。でも、それを批判する声や、からかわれて傷ついた人の話もあります。
この記事では、まず「ブサイク」の言い方にお答えします。そのあとで、その言葉が現地でどう受け止められるのかを、実際の例で確かめます。
タイベオ先生日本でもルッキズムやコンプラがどんどん厳しくなっていますが、ベトナムでの容姿いじりのコンプラはどうなのか、まとめてみました。
ベトナム語で「ブサイク」はどう言う?意味と自虐のフレーズ
ベトナム語で「ブサイク」は、xấu(サウ)またはxấu xí(サウ・スィー)と言います。
まずはこの二つの違いと、自分に言うときと相手に言うときの違いを押さえておきましょう。
xấuとxấu xíの意味の違い
xấuは、「悪い」を広く表す言葉です。品質や性質の悪さにも使い、容姿の話なら「ブサイク・醜い」の意味になります。
xấu xíは、見た目が美しくない、見苦しいという意味です。日本語の「醜い」「不細工」にあたります。
xấu=悪い、(容姿の話では)ブサイク
xấu xí=醜い、不細工、見苦しい
どちらも、男性にも女性にも使えます。xấu xíは人の見た目だけでなく、容姿いじりのような行為を「見苦しい」と批判するときにも使います。
読みは、北部の発音を目安にすると、xấuがサウ、xấu xíがサウ・スィーです。ấもíも声調記号はsắcで、北部では上がり調子の音になります。
カナはあくまで目安です。カナどおりに、短く鋭く言おうとしなくて大丈夫です。
xấuは「悪い」も含む広い言葉、xấu xíは見た目の悪さを言う独立した言葉と覚えておくと、使い分けやすくなります。


「私はブサイクです」と自分について言う場合
自分の容姿について言うなら、こうなります。
Tôi xấu xí.=私は不細工です/醜いです。
男性が自分のことを言うなら、xấu traiも使えます。
Tôi xấu trai.=私はブサイクです。
形容詞の文では、「〜です」にあたるlàは入れません。主語のあとに、そのまま形容詞を置けばOKです。
xấu traiは男性の容姿に使う言い方で、đẹp trai(ハンサム)と対になります。
実際に、自分のことをこう言う人もいます。ベトナムの男性歌手のTùng Dươngは、インタビューでTôi xấu traiと切り出し、芸能界で一番不細工なわけではない、と続けて自虐しています(Vietnammoi)。
ただ、言葉として正しいことと、笑いになるかどうかは別の話です。自分のことを言う文でも、場面によって軽い自虐にもなれば、深刻な自己評価にもなります。
人称にも気をつけてください。ここで使ったtôiは説明のための「私」で、友達同士の会話では、相手との関係によって変わります。

ベトナム語で「かっこいい」の言い方は以下の記事を参考にしてください。

相手に向けると何が変わる?
では、同じ言葉を相手に向けてみます。男性の相手を想定した例です。
Anh xấu trai quá!=あなた、ずいぶんブサイクだね!
自分のことを言っていた文が、相手の見た目への評価に変わります。quáは「とても」と強める言葉ですが、付けたからといって冗談として受け取ってもらえるわけではありません。
日本だったら、以前に吉本でブサイク芸人のランキングがあって、フットボールアワーの岩尾さんや、ほんこんさんは「ブサイク芸人」の殿堂入りを果たされたことがありました。
Anh Hong kong rất xấu trai. ほんこんさんは非常にブサイクです。
タイベオ先生令和のコンプラで考えると酷い話ですよね(笑)
ちなみに、まぎらわしい言葉がもう一つあります。
xấu hổ=恥ずかしい
xấuが入っていますが、容姿の悪口ではありません。
ベトナムでは自虐も他人へのからかいもある。冗談と侮辱の境目は?
ベトナムにも、自分の見た目を笑いにする人もいれば、他人の容姿をからかう場面もあります。同じ容姿の話でも、自分に向けるか他人に向けるかで、受け止められ方は変わります。
芸能人の自虐が成立している実例
例えば、ベトナムの女性コメディアン・女優のThu Trangは、公の映画イベントで自虐ネタを語ったことがネットの記事に書かれていました。
Tôi chỉ có điểm chung duy nhất với nhân vật chính là xấu như Thị Nở.
日本語にすると、「主人公と私の唯一の共通点は、ティ・ノーみたいにブサイクなことです」という意味です。
先ほどの歌手のTùng Dươngも、インタビューで自分の見た目を笑いにしています。
お笑い芸人のMạc Văn Khoaも、自分の容姿をxấu traiと言い、それが自分の芸風につながっていると語っています。
「親しいから」「冗談だから」では片づかない
ベトナムでもテレビのバラエティ番組では、芸人同士が互いの容姿をいじる場面もあります。親しい共演者のノリだと流せる人がいる一方で、その笑い方を批判する声も出ています。
現地のメディアでも、見た目をけなすことを「社交上の冗談」で済ませてしまうのはよくない、という批判が出ています。容姿いじりがあるからといって、みんなが受け入れているわけではないようですね。
ベトナム人同士でもたまに「太ったね」ということもありますが、傷つく人もいます。例えばTuyền Mậpというコメディ女優は、体型をからかわれて傷ついた経験を語っています。
彼女は中学生の頃、「mập như heo」(豚みたいに太っている)と言われることもあったそうです。
こうした例から、ベトナムにおいて、容姿いじりが冗談か侮辱かを考える観点を四つに整理します。
- 対象:自分についての発言か、相手についての発言か
- 関係と立場:どんな関係で、どちらが上の立場か
- 公開範囲:二人だけか、第三者や不特定多数の目に触れるか
- 受け手の反応:何度も繰り返していないか、相手が本当に笑っているか
タイベオ先生まあ、当たり前っちゃ当たり前なんですけど、この辺りは万国共通ですね。
特に気をつけたいのは、相手が笑っているときです。場の空気を壊さないように笑っているだけかもしれないので、笑顔だけで「この冗談は大丈夫」と判断しないようにしたいですね。
自分をネタにした言葉は、他人が同じ言葉を向けてよい理由にはなりません。

北部と南部で違う?言葉の違いと容姿いじりの許容度を分ける
北部と南部では、容姿や体型を表す言葉に地域差があります。ただ、言葉が違うからといって、冗談がどこまで通じるかまでは分かりません。
たとえば、mậpは南部で使われる「太った」という言葉です。北部では béo です。
私はハノイに住んでいて、béo は「デブ」という軽蔑語というより「ふくよか」というニュアンスがあるように感じます。実際にベトナム人に聞くと、ベトナムは昔は貧しかったので、子供が「太い」というのは健康で育ちが良い、裕福である印であるようにみられることもあり、「太い」と形容されるのは、必ずしも悪い意味ではないよ、ということでした。
タイベオ先生ちなみに私の名前タイベオ=Thái béo は太いことに由来しています。
こうした背景を知ると、béoを日本語の「デブ」と訳すだけでは、伝わらないニュアンスがあるんですね。「太い」という言葉でも、悪口のつもりで言っているとは限りません。 ただ、「太い」が悪口にならない場面があるからといって、「ブサイク」とからかっても大丈夫、ということにはなりません。
ベトナムのZ世代はどう受け止める?容姿いじりとルッキズムへの反発
見た目への評価は、冗談の場だけにとどまりません。若い世代には昔からの容姿いじりを問い直す動きがあり、同時に、美しくあることを求める圧力も目に見える形であります。
「昔からの冗談」を問い直す若者の動き
ハノイには、容姿いじりに反対する若者の活動があります。2018年にハノイの高校生たちが始めた「The Glow」です。
短い物語や文章を通して、容姿に悩む人を励まし、一人ひとりのよさを大切にしようと呼びかけています。
2021年当時に運営代表を務めていたNgọc Hằngさんも、からかわれてきた一人です。
歯の矯正をしていた中学生のころ、友達や親戚にからかわれ、笑うことも写真を撮ることもためらうようになったそうです。親戚が集まるたびに、傷つく冗談に耐える心構えが必要だったといいます。
そんな彼女を支えたのは、そばにいてくれた友達でした。今度は彼女自身が、同じように悩む人を支える側に回っています。
The Glowは一つの活動で、Z世代全体の意見を示すものではありません。それでも、からかわれた経験を持つ若者が、その笑いを変えようと動いている例です。
企業の側にも、同じ方向の発信があります。国際的な美容ブランドのMaybellineは、L’Oréal Vietnamのキャンペーンで、ベトナムのGen Z向けに「Every Flaw is a 10」(欠点だって10点満点)というメッセージを打ち出しました。
容姿への中傷に反対し、顔立ちの特徴を隠すのではなく、メイクで生かそうという考え方です(キャンペーン紹介)。ただ、これは企業の発信なので、若者全体の声をそのまま表すものではありません。
テレビ・職場・SNSでは?冗談とコンプライアンスの関係
最後にベトナムでのコンプラについてちょっと触れておきましょうい。
ベトナムでもテレビでの発言、職場でのやり取り、SNSへの投稿には、それぞれ守るべきルールがあります。容姿についての発言に関係するものを、職業上の規範、法律、サービスの規約の三つに分けて見てみましょう。
- 職業上の規範:芸術分野の行動規範(文化スポーツ観光省の3196号)には、他人の尊厳を傷つけないという原則と、SNSに関する決まりがあります。ただし、容姿いじりを名指しして罰する決まりではありません。
- 法律:民法34条は、名誉や人格の尊厳、信用を守る条文です。労働法には差別や尊厳についての規定があり、127条では、懲戒のときに名誉や尊厳を傷つける行為を禁じています。
- サービスの規約:TikTokのガイドラインでは、見た目への侮辱を含むいじめやハラスメントを禁止しています。
どれも対象や条件が違うので、一言だけを取り出して違法かどうかを決めることはできません。容姿の条件がある求人を、すべて違法と考えることもできません。
SNSの規約は法律とは別のものです。規約があるからといって、個別の投稿が必ず削除されるわけでもありません。
テレビでも職場でもSNSでも、笑いのつもりかどうかとは別に、その場のルールがあります。
まとめ|言い方だけでなく、誰を笑いの対象にするかを考える
ここまで、言葉の意味から、ベトナムではブサイクという言葉が現地でどう受け止められるかまで見てきました。最後に要点を振り返ります。
- 「ブサイク」はxấuかxấu xíで、男性の自称にはxấu traiも使う
- 自虐が笑いとして成立する実例はあるが、同じ言葉を他人が向けてよい理由にはならない
- 言葉の地域差はあるが、冗談の許容度を南北で直接比べた資料は確認できていない
- 容姿いじりを問い直す若者の動きと、外見が仕事などの評価に関わる現実がある
- 笑いとして行われても、職業上の規範、法律、サービスの規約は別に存在する
言葉を知ることは、その言葉を誰に向けるかを考える入口でもあります。自分を笑う一言は、自分に向けるだけにとどめておきたいですね。
この記事では、以下の資料を主に参考にしました。
- 語彙:東京外国語大学AA研のベトナム語研修語彙集
- 容姿いじりへの批判:VTVの容姿侮辱に関する記事
- 若者の活動:Dân tríのThe Glow取材記事
- 容姿と求人の関係:ベトナムの求人研究・2025年1月版
- 職場での尊厳の保護:ILO NATLEX掲載のベトナム労働法・非公式英訳








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