ベトナム語は、東南アジアの言語で、とっつきにくいイメージがあります。
でも、実は日本語と意外な共通点があるのをご存知でしょうか。
いくつかの語彙は、日本語とほとんど意味は同じです。
さて、クイズですが、下記のベトナム語の意味がわかりますか?
- Nông dân
- Học phí
- Nội dung
- Nội Khoa
- Khoa học
まだ、勉強を始めたばかりだと、全然わからないですよね。
でも、このベトナム語の言葉に、それぞれ漢字を当てはめていくと〜、
- 農民
- 学費
- 内容
- 内科
- 科学
あら不思議、辞書を調べたわけではないのに、意味がはっきりわかります。
実は、ベトナム語の語彙の多くは日本語と共通しているのです。こうした語彙のことを漢越語と言います。
この記事では、漢字という眼鏡をかければ見えてくる、面白い漢越語という名のベトナム語の世界について、ご紹介していきます。
わたしも、ベトナム語を始めたばかりの頃に漢越語を知ることにより、「わかる!」「おもしろい!」という体験をし、ベトナム語をもっと身近に感じることができました。
この記事では
- なぜ、ベトナム語で漢越語が使われているのか
- 漢字という眼鏡をかけて、漢越語の世界をのぞこう
といったテーマで、あなたを面白い漢越語の世界へご案内いたします。
なぜ、ベトナム語で漢越語が使われているのか
わたしたちがふだん日本語に取り入れて使っている、漢字2字で表される単語の多くは、漢語です。つまり中国語です。同じ言葉でも中国語と読み方が違うのは、言葉が入ってきた時代の中国の読み方を、音読みして、使っているからです。一方、日本古来の大和言葉を訓読みとして当てています。例えば、「使用」「使う」といった具合ですね。
ベトナムでは、長らく中国の支配を受けていた関係で、もともとは漢字を使っていました。古典や、国の文書なども全部、漢文で書かれていました。
そして、日本語と同じように、非常に多くの漢語がベトナム語として取り入れられてきました。
こうした、ベトナム語に取り入れられた漢語、漢字語のことを漢越語といいます。
実にベトナム語の語彙の70%近くが漢越語であるとも言われています。
冒頭で出てきた単語もすべて漢越語です。その漢語を、ベトナム式に音読みしているわけです。
現在では、ベトナム語の表記文字は、ラテン文字が用いられていますので、どれが漢字でどれが現地語かパット見ただけでは判断できません。
現在用いられているベトナム語の表記文字は、ラテン文字です。このラテン文字の表記法は、17世紀にフランス人の宣教師によって考案されたもので、後のフランス統治時代に、識字率アップのために普及が進められ、1945年から公式の表記文字になり、現在では漢字は全く使われなくなりました。それで今では、どの語が漢字でどの語が現地語(ベトナム語)か、パッと見ただけでは判断できません。でも、ベトナム語の7割近くは、漢字で書くことができるのです。
ベトナム語の語彙の70%が漢字に置き換えられる
漢字という眼鏡をかけて、漢越語の世界をのぞこう
ベトナムの正式国名も漢字表記できる
例えば「ベトナム」は正式には
「ベトナム社会主義共和国」ですが、これをベトナム語では
“Cộng Hoà Xã Hội Chủ Nghĩa Việt Nam”
と表記します。
で、これを漢字に置き換えると、
「共和社會主義越南」
になります。
一部、旧字体になっていますが、漢字にしてみると意味がわかりますね!
日本語にそっくりな漢越語
冒頭のクイズで出てきた漢越語は、読み方は日本語とずいぶん違いましたので、読んだだけでは漢字をイメージしにくかったと思います。
でも、漢越語の中に、意味も読み方も日本語とほぼ同じという言葉がたくさんあります。
では、またクイズです。次のベトナム語の意味が、わかりますか?音に注意して想像してみてください。
- Chú ý
- Thái độ
- Động ý
- Ý kiến
- Kỷ niệm
- Cách ly
- Quản lý
- Kết hôn
- Kết quả
- Quốc ca
いかがでしたか?何となく想像できたでしょうか。
では、答えです。
- Chú ý 注意
- Thái độ 態度
- Động ý 同意
- Ý kiến 意見
- Kỷ niệm 記念
- Cách ly 隔離
- Quản lý 管理
- Kết hôn 結婚
- Kết quả 結果
- Quốc ca 国歌
面白いですよね。これは、ほんの一例で、まだまだたくさんあります。
わたしも、初めて知った時、びっくりしました。
最初はベトナム語ってなんか得体のしれない言語だな~と思っていましたが、これを知って、急に親近感を覚えたもんです。
これらは漢語です。でも現在の北京語で読むと、読み方が随分ちがいます。広東語の方がベトナム語に近い読み方になります。
ベトナムにこれらの漢字が入った古代の中国語はこれに近い読み方をしていたようです。
さらに、日本語の漢字の音読みも、実は元々は古い時代の中国語の読み方になります。その理由で、漢越語は中国語より日本語の方に読み方が近いのです。
ベトナム語って、何だか日本語の親戚のような言語です。
音読みの仕方が違うが意味はだいたい同じ漢越語
他にも読み方は違っても漢字にすれば一瞬で意味が分かる言葉もあります。
冒頭であげた例をここでもう一度取り上げます。
- Nông dân 農民
- Học phí 学費
- Nội dung 内容
- Nội Khoa 内科
- Khoa học 科学
漢字一つ一つに読み方があるので、慣れてくると、言葉の意味を知らなくても、漢字を思い浮かべると意味がわかるときもあります。
例えば、 Nội = 内、Khoa học = 科学、という知識があれば、病院で目にする “Nội Khoa” が「内科」だ、とすぐに推察できるのです。
中国語ではないベトナムオリジナルの漢越語
ここで、またクイズです。次のベトナム語の漢字の意味を考えて、どんな言葉を表しているのか考えてみてください。
- Cảm ơn 感恩
- Khẩu trang 口装
- Nghệ sỹ 芸士
- Quan trọng 関重
- Phát Thanh 発声
- Truyền hình 伝形
- Tạm biệt 暫別
いかがでしたか?ご存知の言葉もあったでしょうか。
では、答え合わせです。
- Cảm ơn 感恩 恩を感じるで「ありがとう」ですね。
- Khẩu trang 口装 口を装うで「マスク」です。
- Nghệ sỹ 芸士 芸をする職業の人で「芸術家」
- Quan trọng 関重 これは「重要」という意味です。
- Phát Thanh 発声 声を発する「ラジオ」です。
- Truyền hình 伝形 形を伝える「テレビ」です。
- Tạm biệt 暫別 暫しの別れ「さようなら」です。
地名も漢越語が多い
地名や人名の多くが漢字で表記することができます。
例えばわたしの住んでいる「ハノイ」はベトナム語で “ Hà nội ” です。
これを漢字にすると「河内」になります。
大阪に河内(かわち)という地域がありますが、わたしは大阪出身なので、はじめてその意味を知った時、思わず笑ってしまいました。
ホーチミンは 「胡志明」とかけます。そしてダナンは 「沱㶞」。
だ、沱㶞?
このように日本語で使われていない中国語の漢字が由来する場合もあります。それで残念ながら全部が全部理解できるわけではありません。
人名も漢越語が多い
人名で言うと姓で一番多いおなじみのグエンさんですが、漢字にすると
「阮さん」 になります。
グエン・ヴァン・フエさんは Nguyễn Văn Huệ 、漢字にすると
「阮文恵」さん になります。
皆さんが普段出会う、
ホアさんは「花さん」か「華さん」、
ドゥックさんは「徳さん」、
フオンさんは「香さん」、
トゥアン・アインさんは「俊英さん」。
漢字にすると、意外と日本でおなじみの名前だったりするんですよ。
ちなみにわたくしタイベオの本名は、「〇〇 〇太」、と名前の最後に「太」という漢字が使われています。「太」はベトナムの音読みで ”Thái” です。そしてベトナム語で「太い」は “Béo”と言います。タイベオはベトナム語で書くと “Thái Béo”。 まさに太っちょの自分にぴったりな名前です。
いかがでしたか?
ここでご紹介できたのは、ほんの一部に過ぎません。きっと、これからのあなたのベトナム語学習という旅の中で、いろいろな発見や出会いがあると思います。
この記事を通して、あなたが少しでもベトナム語に親近感を持ってもらえたら幸いです。
コメント