
遠く離れた友だちや恋人に、「寂しいよ」と伝えたい。
ベトナム語で「寂しい」は何と言えばいいのでしょうか。
先に答えをお伝えすると、日本語の「寂しい」にあたるベトナム語は一つではありません。何を寂しく感じているかで、使う言葉が変わります。
- buồn(ブオン):寂しくて気持ちが沈む。悲しい気持ちも含みます。
- cô đơn(コー・ドン):孤独を感じる。
- nhớ(ニョー):会えない人や離れた家が恋しい。「nhớ+恋しい相手や場所」の形で使います。
「寂しい」とひとことで言っても、気持ちが沈んでいるだけの日もあれば、ひとりぼっちだと感じる夜もあります。あの人に会えなくて胸がきゅっとなる、ということもあるでしょう。この3つは、それぞれ別の寂しさに近い言葉です。
ただし、どれも日本語の「寂しい」にぴったり重なるわけではありません。buồnは「悲しい」の意味にもなりますし、nhớには「覚えている」という意味もあります。だからこそ、単語を一つだけ丸暗記するより、自分の気持ちに合う一語を選べるようにしておくほうが伝わります。
タイベオ先生この記事では、ベトナム語で「寂しい」を伝えるために、buồn・cô đơn・nhớの意味と読み方、例文を順に見ていきます。
読み方の説明は北部のハノイの発音を基準にします。カタカナはあくまで目安なので、声調や母音のコツも一緒に押さえましょう。
読み終わるころには、「一人で寂しい」「会えなくて寂しい」と、自分の気持ちに合わせて言い分けられるようになります。
ベトナム語の「寂しい」は、気持ちや場面で言い分ける

「ベトナム語で寂しいと言いたい」と思ったとき、まず考えたいのは、何が寂しいのかです。日本語の「寂しい」は、気持ちが沈むことも、ひとりぼっちの感じも、会えない人への思いも、全部まとめて言えてしまう便利な言葉です。ベトナム語では、この中のどれを言いたいかで言葉を選びます。
| いまの気持ち | ベトナム語 | 読み(目安) | 伝わる中心 |
|---|---|---|---|
| なんとなく気持ちが沈んで寂しい | buồn | ブオン | 寂しさ・悲しさといった気持ちそのもの |
| ひとりぼっちだと感じる | cô đơn | コー・ドン | 孤独を感じていること |
| あの人に会えなくて寂しい、家が恋しい | nhớ+対象 | ニョー | 誰・何が恋しいのか |
この表で、自分の気持ちに近い行を探してみてください。迷ったら、「何が寂しいのか」を言葉にしてみると選びやすくなります。
- 「誰かがいない」なら nhớ
- 「ひとりだと感じる」なら cô đơn
- 「理由は置いておいて、気持ちが沈んでいる」なら buồn
という具合です。
ただし、この3つは感情をきれいに仕切る箱ではありません。ひとつの寂しさに、2つ以上が重なることもあるでしょう。ここでは、言いたいことを選ぶための整理だと思ってください。
この節では、3つのうち最初の buồn を見ます。cô đơn と nhớ は、続く節で順に扱います。
いちばん手軽な「寂しい」buồn
buồn は、ベトナム語の初級語彙集で「悲しい・悲しむ」と載っている形容詞です。語学教材では「寂しい」という訳も挙げられています。つまり、寂しいと悲しいがひとつの語の中に入っているのです。
日本語だと「寂しい」と「悲しい」は別の言葉ですが、ベトナム語の buồn は、その両方にまたがる気持ちを言い表せます。どちらの意味になるかは、前後の話の流れで決まります。
いちばん短い文は、これです。
- Tôi buồn.(トイ ブオン):私は寂しい。/私は悲しい。
Tôi は「私」、buồn は気持ちを表す語です。日本語の「私は寂しい」と同じ順番で、主語のあとに形容詞を置くだけの文になります。形容詞の前に be動詞のような語は要りません。
ここで、仮の場面を考えてみます。もし友だちが「最近どう?」と聞いてくれたとして、そこで Tôi buồn. と答えたとします。話の流れが引っ越しや別れなら「寂しい」に、つらい出来事なら「悲しい」に聞こえるでしょう。buồn は意味の幅が広いぶん、前後の話で決まる、と覚えておいてください。
もう少し気持ちを強くしたいときは、形容詞のあとに quá を付けます。
- Buồn quá!(ブオン クア):すごく寂しい!/悲しすぎる!
quá は「〜すぎる」「とても〜」のように程度を強める語で、形容詞の後ろに置くのが決まりです。日本語なら「寂しいなあ」と思わず口にする感じに近いでしょう。主語を言わずに、気持ちだけをぽろっと出せる形です。
Tôi buồn. は、主語を立てて「私は寂しい」と気持ちをそのまま述べる言い方です。それに対して Buồn quá! は、quá で程度を強めた、気持ちがあふれた一言になります。違いは主に、主語を言うかどうかと、気持ちの強さです。どちらも誰かに向けて言うことも、ひとりごととして言うこともできるので、話す相手で使い分ける必要はありません。
なお、Tôi は「私」を表す基本の語ですが、ベトナム語の「私」は相手との関係で変わります。親しい相手に話すときの呼び方は、後の節で出てくる anh・em の例が参考になります。
buồn の発音のポイント
読み方は、ハノイなど北部の発音を基準にします。カタカナの「ブオン」はあくまで目安なので、次の3点を一緒に押さえてください。
- 声調は下降調(ò の記号)です。出だしを高くせず、低めの位置からさらに下へ落とします。声を持ち上げると、別の語に聞こえてしまいます。
- uô は「ブ」と「オ」を別々に言うのではなく、唇を丸めた音から、なめらかに次の母音へ移ります。
- 語末は n で終わります。「ヌ」と母音を足さず、舌先を上の歯ぐきの裏にそっと付けて止めます。
なお、buồn は寂しさとは別に、他の語と組み合わさる決まった言い方(buồn ngủ「眠い」など)でも使われます。この記事で扱うのは、気持ちを表す buồn だけです。


気持ちが沈んでいる、寂しい、悲しいといったことを言うだけなら、最初の1語は buồn で足ります。ただ、buồn だけでは、誰に会えないのかも、ひとりぼっちだと感じているのかも分かりません。そこまで伝えたいときに、cô đơn や nhớ を選んでいきましょう。
一人で寂しい・孤独を感じるなら cô đơn
「ひとりぼっちで寂しい」と言いたいとき、候補になるのが cô đơn(コー・ドン)です。日本語では「孤独」や「孤独を感じる」にあたる語で、前の節の buồn よりも、寂しさの中身がはっきりします。気持ちが沈んでいるというだけでなく、「自分は孤独だ」と感じていることを伝える言葉です。
Tôi cảm thấy cô đơn. の意味と使う場面
使い方を、例文で見てみましょう。
- Tôi cảm thấy cô đơn.(トイ カム タイ コー・ドン):私は孤独を感じる。
Tôi は「私」です。cảm thấy は「感じる」にあたる言い方で、そのあとに cô đơn が続きます。「私は」「感じる」「孤独」と、役割ごとに分けて読めば、意味をつかみやすい一文です。
buồn のときは、Tôi buồn. のように気持ちを一語で言いました。cô đơn を使うこの文では「感じる」を挟んで、「孤独を感じている」と、感じている中身に目を向けた言い方になります。
使う場面は、一人でいる夜に限りません。たとえば、新しい土地に引っ越して知り合いがいない。人に囲まれているのに、誰にも気持ちが届かない気がする。そんな「ひとりぼっちだ」という感覚を言いたいときに合う言葉です。
một mình は「一人でいる状態」、cô đơn は「孤独を感じる気持ち」
cô đơn と並べて覚えておきたいのが、một mình(モッ・ミン)です。một mình は「一人」「一人で」という意味で、周りに誰もいない、という状態を表します。
違いは、「状態」と「気持ち」です。một mình は、ひとりでいるという事実を言う言葉です。cô đơn は、そのときの心の中を言う言葉です。
日本語でも同じ区別があります。「一人でいる」ことと「寂しい」ことは、同じではありません。一人の時間を落ち着いて過ごせる人もいれば、人が大勢いる場所で孤独を感じる人もいます。ですから、一人でいる状態を một mình、そこで感じる孤独を cô đơn、と分けて考えると整理しやすくなります。
つまり、「今日は一人だ」と言いたいのか、「孤独を感じている」と言いたいのかで、選ぶ言葉が変わります。寂しさを伝えたいなら、cô đơn のほうです。một mình は、孤独を感じているかどうかまでは示しません。
cô đơn の発音のポイント
cô đơn の読み方は、ハノイなど北部の発音を基準にします。カタカナの「コー・ドン」は目安にとどめて、次の3点を押さえてください。
- 声調は、cô も đơn も平らな調子です。どちらも同じ高さのまま、まっすぐ伸ばします。下げたり上げたりしないのがコツです。
- đ は、日本語の「ド」より、喉を少し震わせて出だしを引き込むような音です。カタカナの「ド」で済ませず、舌先を上の歯ぐきに付けて始めます。
- ơ は、日本語の「オ」をそのまま当てません。唇を丸めずに、口を軽く開けて出す母音です。語末の n は「ヌ」と母音を足さず、舌先を歯ぐきの裏に付けて止めます。
buồn のときと同じく、語末に母音を足さないことがポイントです。cô đơn は2つの音がどちらも平らなので、リズムを崩さず、ゆっくりそろえて言ってみましょう。
「ひとりぼっちで寂しい」なら cô đơn、「会えない人が恋しい」なら次の nhớ です。
会えなくて寂しい・恋しいなら nhớ+相手
「あの人に会えなくて寂しい」と言いたいときは、nhớ(ニョー)の出番です。nhớ は「恋しい」「会いたい」と思う気持ちを表せる語で、「何が・誰が恋しいのか」を後ろに置きます。
形はとてもシンプルです。
- nhớ+恋しい相手や場所
buồn は気持ちを一語で言えましたが、nhớ は恋しい対象を後ろに添えることで、誰や何が恋しいのかがはっきり伝わります。「寂しい」の理由がそのまま文の中に入る、と考えてください。
nhớ は「覚えている」でもある
ここで一つ、先に知っておきたいことがあります。nhớ には「覚える」「覚えている」という意味もあります。ベトナム語の初級語彙集でも、nhớ は「覚える・恋しい」と並べて載っています。
同じ語が「覚えている」にも「恋しい」にもなるので、nhớ という音だけを聞いても、どちらなのかは決まりません。この記事で扱うのは、会えない人や離れた場所を思う「恋しい」の nhớ です。後ろに人や家が来て、その不在を思う文なら、「恋しい」と読んでいくことになります。
Anh nhớ em. と Em nhớ anh.
恋しさを伝える一文の代表が、次の2つです。
- Anh nhớ em.(アイン ニョー エム):あなたが恋しい。会いたい。
- Em nhớ anh.(エム ニョー アイン):あなたが恋しい。会いたい。
2つは同じ気持ちを言っていて、違うのは、話している人が自分と相手を何と呼ぶかです。文の形は「自分+nhớ+相手」です。Anh nhớ em. は、話し手が自分を anh、相手を em と呼ぶときの文。Em nhớ anh. は、話し手が自分を em、相手を anh と呼ぶときの文です。
たとえば、お互いを anh と em で呼び合っている二人がいるとします。anh と呼ばれているほうが「会いたいな」と伝えるなら Anh nhớ em. になり、em と呼ばれているほうが同じ気持ちを伝えるなら Em nhớ anh. になります。同じ二人の間で、立場が入れ替わっただけです。
ここで気をつけたいのは、anh と em は「男性だから anh、女性だから em」と性別だけで決まるものではない点です。ベトナム語の「私」と「あなた」は、相手との関係で変わります。この2つの文は、すでに anh・em で呼び合っている関係での例だと考えてください。別の呼び方をしている相手には、その呼び方に置き換えて、「自分+nhớ+相手」の形を作ります。
なお、前の節で触れた Tôi は、nhớ の文でも自分を指す語として使えます。ただ、恋しさを伝えたい親しい相手と、普段どう呼び合っているかを優先して考えてください。
nhớ nhà:家が恋しい、ホームシック
nhớ のあとに来るのは、人だけではありません。nhà は「家」で、nhớ nhà と言えば「家が恋しい」「ホームシック」という組み合わせになります。
離れた場所にいて、家のことを思う。そんなときに、人の名前や呼び方の代わりに nhà を置くだけで、恋しさの向かう先が変わります。恋人に向けた言葉だけでなく、家や家族のいる場所を思う気持ちにも使える、ということです。
nhớ は「恋人専用の言葉」ではなく、「恋しい対象を後ろに置く語」と覚えておくと使い回しが利きます。
nhớ の発音のポイント
読み方は、ハノイなど北部の発音を基準にします。カタカナの「ニョー」は目安にとどめて、次の3点を押さえてください。
- 声調は、上昇調(ớ の記号)です。声の高さを中ほどから、より高いほうへ持ち上げます。下げたり平らに伸ばしたりすると、別の語として聞こえてしまいます。
- 出だしの nh は、日本語の「ニ」と「ョ」を二つに分けて言うのではなく、一つの子音として始めます。舌の中ほどを上あごに付けて、鼻に抜く音です。
- ơ は、日本語の「オ」をそのまま当てません。唇を丸めずに、口を軽く開けて出す母音です。cô đơn の đơn と同じ母音なので、あわせて練習できます(cô の ô は別の母音です)。
カタカナだけでは音が再現できないので、声を持ち上げることと、唇を丸めないことの2点を意識して、ゆっくり口に出してみてください。
ここまでは、「会えなくて寂しい」「恋しい」の言い方に絞って見てきました。気持ちが「寂しい」から一歩進んで、好意や愛情をもっとはっきり伝えたい。そう思ったときは、ベトナム語で好意や愛情を伝える表現をまとめた記事も参考にしてください。告白のフレーズなど、この記事では扱わなかった言い方がわかります。
気持ちが沈んでいるだけなら buồn、ひとりぼっちだと感じるなら cô đơn、会えない人や離れた家が恋しいなら nhớ。
今のあなたの寂しさに近い一語を選んで、まずは一文、声に出してみてください。






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