ベトナム語って、ホーチミンの人とハノイの人で発音が違うんですか?
そうなんです。ベトナム語は同じベトナム語でも、北部と、中部と、南部で発音が全然違います
ベトナムの2大都市、ホーチミンでは南部弁、ハノイでは北部弁が話されていて、発音が大きく異なります。
関西弁と関東弁のような感じですね
市販のベトナム語テキストは、北部発音で収録されているため、ホーチミンで話されているベトナム語と少し異なります。
では、北と南でベトナム語の発音はどのように異なるのでしょうか?
実際にハノイに住んでいるわたしが、いろいろな地域の人の話すベトナム語を聞いて感じたことも交えながら、北部と南部と、そして中部の発音の違いについて解説していきます。
- ベトナム語は北部と南部によって発音が異なるのははなぜか
- 北部の発音の特徴
- 南部の発音の特徴
- 中部の発音の特徴
なぜベトナム語は北部と南部によって発音が違うのか
そもそもベトナム語にはどうしてそのような発音による地域差が出るのでしょうか?
ベトナムの地形を見るとよくわかります。
ベトナムの地図
ベトナムの国土は中国の下部からS字を描くように南北に約1650Kmの細長い地形をしているので、北と南で、気候も文化も言葉もだいぶ異なります。
北と南で距離も遠いですから、昔はそんなに行き来もなく、同じ民族ですが、お互いがそれぞれがそれぞれの生活を続けてきました。
同じベトナム人でも、北と南では性格も気質も随分変わってきます。
また、以前は、北と南に分断されていてそれぞれ別の国だった歴史的背景もあります。
ところで、ベトナムの首都ってどこだかおわかりですか?
ベトナムの首都はハノイです。ホーチミンではありません。
私はその首都ハノイで生活しています。ハノイは北部なので基本的にはみんな北部の方言を話します。
でも大勢の人が地方から出稼ぎに来ているので、耳をすませば、中部地方などのいろんな方言が飛び交っています。
ホーチミンの人ともたまに話す機会があるんですが、やっぱり発音が全然ちがいます。
ベトナム最大の経済都市はホーチミンです。
ホーチミンには多くの国営企業や、外資系企業が集まり、多くの外国人が住んでいます。
ホーチミンは南部なのでみんな南部の方言を話します。
発音もそうですが、北部と南部とでは使っている言葉や言い回しもお互い結構違います。
それでは、まず首都ハノイで話されている北部の発音の特徴について見ていきましょう。
北部の発音の特徴
北部の子音の発音上の特徴
北部の発音は聞いた感じ、ザクッザクッと切れ味がよく、鋭利でシャープな発音をしています。子音にはザ行の音が出てきます。声調もはっきりと6声を使い分け、音の高低差もしっかり出してくるので、比較的聞き取りやすいです。
例えば、次の例文で考えてみましょう。
Tôi là giáo viên dạy tiếng Việt. 私はベトナム語教師です。
トイ ラー ザオヴィエン ザイ ティエンヴィエッ(ト)
という感じに発音します。
北部の人の話し方の特徴
北部の人の話し方は、少しきつく感じます。
北部弁の女性(特におばちゃん)と話していると、時々叱られているような気にすらさせられます。(本人は普通に喋っているだけです)
発音の仕方も鋭く、言い方も話し方もストレートで歯に衣着せぬ言い方をします。街に出てベトナム人同士の会話を聞いていると、喧嘩してるのかな?!と思うことさえあります。
実際、若いお姉さんを含め、北部女性は気のきつい人が多いと言われています(本人たち談ですよ)。これは、文化というか、生まれ育った環境のせいで本人たちに悪気はないんですけどね。
わたしの友人に北部女性と南部男性のカップルのご夫婦がいるんですが、結婚当初、南部育ちのご主人は北部育ちの奥さんと話すとき、常に怒られているような感じがして戸惑ったと話されていました。ところが奥さんの方はケロッとして、別にこれが普通の言い方で、特に怒っているわけではないとのこと。
そのため、男性(おっちゃん)が北部弁で熱く語りだすと、演説口調(に聞こえます)で、ちょっと威圧感があります。また話し出すと、とにかく長い(これは全国共通かな)ので、ちょっとクドいです。
若い男の人は、発音が聞き取りやすく話しやすいです。
北部発音は、こんな感じになります。
南部の発音の特徴
南部の子音の発音上の特徴
一方、南部発音は、柔らかくソフトな発音をします。頭の子音にはヤ行の音がよく出てきます。音の高低差が、ちょっと曖昧なところも出てきます。
先ほどの例文をもう一度。今度は南部発音で読んでみましょう。
Tôi là giáo viên dạy tiếng Việt. 私はベトナム語教師です。
トイ ラー ヤオイェン ヤイ ティーンイェッ(ト)
という感じに発音します。
例えば、 “Anh“ が 北部では「アイン」ですが、南部では「アン」と発音しています。(厳密に言うとちゃんと違いはあるんですが)
南部の声調の特徴
南部発音では「尋ねる声調」 Thanh hỏi と「倒れる声調」 Thanh ngã の区別が非常にあいまいになっています。
北部発音では「倒れる声調」はクイックイッと切れよく上がりますが、南部発音では「倒れる声調」はふわっと下がるだけで上昇せず「尋ねる声調」に寄せている感じです。
「重い声調」 Thanh nặng は、北部ではつまらせるように音を切って発音しますが南部ではもっとふわっとしています。
例えば Chị は、北部では「チッ!」ですが南部では「チィ〜」という感じにちょっと伸ばして発音します。
南部の人の話し方の特徴
話し方も柔らかで、あまり直接的な言い方をせず、うまく遠回しな表現を好みます。
なので、南部の人と話していると、あまりホンネが見えてこないので、北部のストレートさに慣れていると、ちょっと戸惑ってしまいます。
「え、今の断ってたん?!」みたいなことがよくあります(笑)
ベトナム人同士は、そのへんの言葉の裏側の意味や、空気をうまく読んで、言いにくいことを伝えあっています。
あと南部の人は、明るくて陽気な人が多いので、話の方向を冗談の方向へ持っていきがちです。
この「お笑い」というのは、言語コミュニケーションの中でも最も難易度の高い分野で、言語の知識だけではなくて、文化や背景や、慣用句や、その他のプロセスが理解できてはじめて成り立つものなので、なかなか難しいです。
周りがゲラゲラ笑ってる中で、いまだにわたしはちんぷんかんのときが多いです。
女性の話し方で言うと、南部弁のほうが可愛く聞こえます。鳥がさえずっているような、そんな感じです。
性格的にも南部の女の子のほうがおっとりしています(ような気がします)。
Youtuberの BEBAさんもコテコテの南部弁ですね。
漫画やアニメなどのベトナム語は南部弁
漫画などベトナム語版に翻訳されているものは南部の人が訳したものが多いように思います。
例えば、ベトナム語の勉強のために、ベトナム語版のドラえもんを読んでみたんですが、聞いたことのない言葉が多くて、仕事の休み時間に職場の同僚に聞くと、「これは、南部の人しか使わないので私は使ったことがない」と言われました。
中部の発音
ここへ来て、輪をかけたように発音のルールがめちゃくちゃなのはオリジナルなのは、ゲアン省、ハーティン省またはフエあたりの中部です。声調のルールは当てはまりません。
上がる声調で、下に潜り込んだり、平板の声調でとんでもなく上に上がったりしていますので、ものすごくなまって聞こえます。
子音の発音は北と南の間ぐらいの感じがします。地域によって差があります。
ゲアン、ハティンあたりはどちらかというと北寄りです。
ダナンや、フエ、ニャチャンあたりはほぼ南です。
使っている言葉も、中部の人達同士が話していると、もはや全く別の言語です。日本でいうと秋田弁か青森弁か、という感じに聞こえます。
性格面で言うと中部の人は、やさしくて穏やかな人が多いです。
わたしが、以前ハノイの日本語センターで教えていた子たちの多くが中部の出身でしたが、北部出身の学生に比べ、穏やかな性格の人が多かったです。
まとめ
このように、この記事ではベトナム語は北と南で発音や話し方まで違いがあることを見てきました。
- 北部の発音:高低差がはっきりしていて、音もシャープ
- 北部の話し方:ストレートで思ったことをはっきり伝える
- 南部の発音:曖昧な声調があって、音はやわらか
- 南部の話し方:遠回しにホンネを隠してうまいこと言う
- 中部の発音:声調の乱れがあり、子音は地域差がある
- 中部の話し方:おだやか、言葉は方言色が強く出ている
記事を最後までご覧下さりありがとうございました。
勉強するとき北部弁と南部弁とどちらを選んだらいいかについては別の記事をご覧ください。
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[…] 参考:ハノイのタイベオ先生「【比較】北部と南部によってこんなに違う!ベトナム語の発音の地域差」 […]