ベトナム語は発音のコツを掴むのがなかなか難しい言語です。

ベトナム語で一生懸命話しかけたのに、”hả??” って聞き返されてしまった…
そんな経験はありませんか?
自分ではちゃんと発音しているつもりなのに通じない。これ、本当に心が折れますよね。
実は、日本人のベトナム語が通じない原因のほとんどは「日本語のクセが抜けていないこと」にあります。
声調、母音、末子音など、日本語にはない要素を無意識に日本語の口の形やアクセントで処理してしまっているのが正体です。逆に言えば、自分のクセに気づいて直せば、発音は確実に通じるレベルになります。
この記事では、ハノイ在住10年・日常生活をすべてベトナム語で過ごす筆者が、日本人がやりがちな発音のクセ5つとその直し方を解説します。
タイベオ先生ベトナム語をやり出して長い時間が経つけど、発音が上手くならない。挫折しそうになっている方の参考になれば幸いです。
- 日本人のベトナム語が通じない根本的な原因
- 声調・母音・末子音・子音・二重母音、5つのクセの具体的な直し方
- 明日から使える発音矯正の練習法
- カタカナ読みから卒業するための意識の持ち方
ベトナム語の発音が通じない原因は「日本語のクセ」が抜けないから
ベトナム語の発音が難しいと言われる理由はいろいろあります。6つの声調、12種類の母音、日本語にない末子音…。でも、これらを知識として知っていても通じない人は多いですよね。
問題の本質は、知識がないことではなく、口が日本語モードのまま動いていることです。
わたしたちは物心ついたときから日本語の口の動かし方が染みついています。母音は「あいうえお」の5つしか使わないし、子音のあとには必ず母音がくっつく。アクセントにも日本語特有のパターンがある。
ベトナム語を読むときも、この日本語の「口のクセ」が無意識に発動してしまいます。テキストにカタカナのルビが振ってあると、なおさらです。目がカタカナを拾った瞬間、口は日本語モードで動いてしまいます。
つまり、発音を良くするために必要なのは「ベトナム語の発音ルールをもう一度覚え直すこと」ではなく、「自分の日本語グセを特定して、一つずつ矯正していくこと」です。
ここから先では、日本人がやりがちなクセを5つに絞って、それぞれの直し方を具体的に紹介していきます。
コツ①|ベトナム語の声調を日本語のアクセントで上書きしない
ベトナム語の発音で一番大事なのは声調です。声調が正しければ、多少ほかの発音が甘くても通じることがあります。逆に声調を外すと、何を言っているのかまったくわかってもらえません。
ところが日本人は、この声調を日本語のアクセントで無意識に上書きしてしまうクセがあります。
わたしもハノイに来たばかりの頃、タクシーの運転手に行き先がなかなか通じなくて本当にもどかしい思いをしました。当時は「ちゃんと声調をつけてるのに、なんで?」と思っていましたが、今振り返ると、声調をつけているつもりで日本語のアクセントに引っ張られていたんですよね。
日本人がよくやる声調ミス3パターン
特に多いのが、次の3つです。
① thanh nặng(重い声調)が跳ね上がる
nặngは低く押さえつけるように落とす声調です。ところが、強く言おうとするあまり音が逆に跳ね上がってしまう人がとても多いです。
たとえば “học”。日本語のリズムだと「ホック!」と「ホ」にアクセントを置きたくなりますよね。そのほうが日本語話者にとっては「気持ちいい」からです。でもそれをやると、nặngの低く落ちる動きが消えてしまいます。
② thanh ngang(平らな声調)が低すぎる
記号のついていないまっすぐな声調は、普通の声より高いところから水平に伸ばす声調です。ところが低めに出してしまう人が多いです。割と上のほうで、スカーンとまっすぐ出すイメージを持ってみてください。
③ 全部の声調がthanh hỏi(尋ねる声調)になる
本人は声調をつけているつもりなのに、すべての音が波打つようなアクセントになってしまうパターンです。これは日本語の疑問文のイントネーション(語尾が上がる)が干渉していることが多いです。
声調を矯正する練習のやり方
声調のクセを直すには、1つの音節で6つの声調を順番に切り替える練習が効果的です。
たとえば “ma” を使って、こうやります。
- ma(ngang)→ mà(huyền)→ mả(hỏi)→ mã(ngã)→ má(sắc)→ mạ(nặng)
- ネイティブの音声を1つずつ聞いて、直後にマネして発音する
- 自分のスマホで録音して、ネイティブの音声と聞き比べる
ポイントは、文の中ではなく1音節だけで練習することです。文で練習すると、日本語のアクセントパターンに引っ張られてしまいます。まず1音節で6つの声調を正確に出せるようになってから、2音節、3音節と伸ばしていくのがコツです。
もう一つ大事なのが、同じ声調が連続する語彙を避けないことです。
たとえば “hẹn gặp lại” は nặng → nặng → nặng と同じ声調が3つ続きます。日本語話者はこれが気持ち悪くて、つい勝手にアクセントをつけて変化をつけたくなりますが、我慢してください。同じ声調が続くなら、同じ動きを3回繰り返すのが正解です。
コツ②|ベトナム語は母音の口をもっと大きく開ける
声調の次に通じる・通じないを左右するのが母音です。
日本語の母音は「あいうえお」の5つだけですが、ベトナム語には12種類あります。この数を聞くとうんざりするかもしれませんが、問題は「12個を覚えること」ではなく、日本語の5つの母音の口の形でベトナム語を発音してしまうことです。
わたしも学習を始めた頃、ネイティブにさんざん言われたのが「口が堅い」でした。自分では開けているつもりなのに、まったく足りていなかったんですよね。
たとえば “a” と日本語の「あ」は似ているようで違います。ベトナム語の “a” は、自分が思っている以上に口を大きく縦に開けなければいけません。日本語の「あ」の感覚で発音すると、ネイティブには別の母音に聞こえてしまいます。
特に通じなくなるペア:ê と e / o と ô と ơ
12種類すべてを一度に矯正しようとすると大変なので、まず混同すると致命的なペアから直していくのがおすすめです。
ê と e の違い
“ê” は日本語の「エ」とほぼ同じなので、そのまま発音すれば大丈夫です。問題は帽子(サーカムフレックス)のついていない “e” のほうです。
“e” は日本語の「エ」よりもっと口を大きく開けて発音します。感覚としては「エ」と「ア」の中間くらいです。この2つを同じ「エ」で発音してしまうと、意味が変わってしまって通じません。
o と ô と ơ の違い
この3つはカタカナにするとすべて「オ」ですが、ベトナム語ではまったく別の音です。
たとえば “tôm”(海老)と “thơm”(人の名前、または「いい香り」)。どちらもカタカナ風に読むと「トム」ですが、ネイティブにとっては完全に別の音です。Thơmさんを呼ぼうとして「チ トム オーイ」と言っても、振り向いてもらえません。
矯正のポイントは、自分が「もう十分に口を動かしている」と思っているところから、あと1段階大げさに開けることです。日本語の口の動きに比べると不自然に感じるくらいで、ベトナム語ではちょうどいい大きさになります。
練習のやり方としては、ê → e → ê → e のように混同しやすいペアを交互に発音して、口の開き具合の差をからだに覚えさせるのが効果的です。鏡を見ながらやると、口の形の違いが目でも確認できます。
コツ③|語末の子音は「寸止め」で止める
これは日本人の発音で一番多い特徴だと思います。
ベトナム語には「語末の子音は、発音する準備をして、出さない」というルールがあります。口の形だけ作って、そこで止める。音は出さない。これが「寸止め」です。
ところが日本語はすべての子音に母音がくっつく言語です。「か」は “ka”、「つ」は “tsu”。子音だけで終わる音節がそもそも存在しません。だから、ベトナム語の末子音にもつい母音をつけて読んでしまいます。
「ホムナイ」ではなく「ホン(m)ナイ」になる理由
実例で見てみましょう。
“Hôm nay tôi học tiếng Việt.”
これをカタカナ読みすると「ホムナイ トイ ホック ティエン ヴィエット」になりますよね。でも実際のネイティブの発音では、こうなります。
- “Hôm” → 「ホン(m)」。口を閉じて “m” の形を作るけれど、「ム」とは発音しない
- “học” → 「ホッ(c)」。喉の奥を閉じて “c” の準備だけして止める
- “Việt” → 「ヴィエッ(t)」。舌先を上の歯の裏につけて止める。「ト」とは言わない
つまり()の中の音は、口や舌をその位置に持っていくだけで、音としては出さないということです。
ここで「ム」「ク」「ト」と母音つきで発音してしまうと、ネイティブには余計な音節が聞こえてしまいます。1語のつもりが2語に聞こえてしまうので、意味が取れなくなるんですよね。
練習のやり方としては、まず末子音のある単語を1つ選んで、こうやってみてください。
- まず普通に「ホム」と日本語読みで言ってみる
- 次に、最後の「ム」を言いかけたところで口を閉じて止める
- 口が閉じた状態で音が止まっていれば正解
感覚としては、言葉を途中でブツッと切る感じです。最初は不自然に感じますが、ネイティブの発音をよく聞くと、たしかにそこで音が止まっていることに気づくはずです。
末子音は全部で10種類ありますが、まずは出現頻度の高い -m, -n, -c, -t, -p の5つから意識してみてください。この5つの寸止めが身につくだけで、通じやすさがかなり変わります。
コツ④|ベトナム語の有気音と無気音を区別する
ベトナム語には、**息が漏れる子音(有気音)と息が漏れない子音(無気音)**の区別があります。日本語にはこの区別がないので、意識しないとどちらも同じ音で発音してしまいます。
代表的なのが “t” と “th” の違いです。
“t” は日本語のタ行に近い音で、息が漏れない無気音です。一方 “th” は息を強く吐き出しながら発音する有気音で、口の前にティッシュを垂らしたら揺れるくらいの息が出ます。
カタカナにするとどちらも「タ行」ですが、ベトナム語ではまったく別の子音です。
わたしも仕事で人の名前を呼んで指示を出す場面で、これに苦労しました。「Tầnさん」「Thânさん」「Thànhさん」「Thắngさん」「Tấnさん」…全部カタカナにすると「タンさん」ですが、発音が不明瞭だったせいで「どのタンさんだ!?」と場を混乱させてしまったことがあります。
矯正のポイントはシンプルで、”th” を発音するときに意識的に息を強く吐くことです。
練習のやり方としては、手のひらを口の前にかざして発音してみてください。”t” のときは手に息がほとんど当たらず、”th” のときは息がはっきり当たる。この差を手で感じながら繰り返すと、からだが区別を覚えていきます。
t → th → t → th と交互に繰り返して、息の出し方の差が安定してきたら、単語レベルで “tôi”(わたし)と “thôi”(やめる)のようなペアで練習してみてください。
コツ⑤|ベトナム語の二重母音・半母音をローマ字読みしない
ベトナム語にはローマ字の見た目どおりに読むと通じない音がたくさんあります。その代表が二重母音と半母音です。
ほとんどの人が、アルファベットをそのまま素直にローマ字読みしていると思います。でも実は、ネイティブはイレギュラーな発音をしています。
いちばんわかりやすい例が “ao” の発音です。
“Xin chào” を「シンチャオ」と読んでいる人は多いと思いますが、ネイティブの実際の発音は「シンチャーォ」に近い音です。”ao” を「ア・オ」と2つの母音を均等に読むのではなく、「アー」を長めに出して「オ」は軽く添えるだけ。こういう細かい違いが、通じる・通じないの分かれ目になります。
テキストのカタカナルビで覚えてしまうと、この「ネイティブが実際に出している音」と「自分の頭にインプットされた音」のあいだにズレが生まれてしまいます。そしてそのズレに気づかないまま話し続けるので、いつまでも通じないという状態になります。
矯正のポイントは、二重母音を見つけたらローマ字読みをいったん捨てて、ネイティブの音声をよく聞くことです。
練習のやり方としては、こんな手順がおすすめです。
- 二重母音を含む短い単語を1つ選ぶ(例:”chào”, “mười”, “được”)
- ネイティブの音声を聞いて、自分のローマ字読みと何が違うかを意識する
- ネイティブの音を真似して発音する。このとき文字を見ないで、音だけをコピーするのがコツ
- 慣れてきたら文字を見て発音し、音と文字の対応を結び直す
文字を見ながら練習すると、どうしても目がローマ字を拾って口が日本語モードに戻ってしまいます。最初は音だけに集中して、あとから文字を対応させるほうが定着が早いです。
二重母音や半母音のルールをすべて覚えるのは大変ですが、意識するだけで驚くほどネイティブに近い音になります。まずは日常でよく使う単語から少しずつ直していけば大丈夫です。
ベトナム語の発音練習で意識すること
5つのコツを紹介してきましたが、最後に日々の練習で大事な意識を3つだけお伝えします。
① とにかくネイティブのモノマネをする
理論で考えすぎると、口が動かなくなります。「舌の位置はここで、口の開きはこれくらいで…」と頭でコントロールしようとするより、ネイティブの音を聞いてそのままマネするほうが上達は早いです。
わたし自身、発音が通じるようになったきっかけは、毎日ネイティブの発音をよく聞いて自分の音を少しずつ寄せていく「微調整の繰り返し」でした。理屈よりもモノマネ。これがいちばん効きます。
② 「上手だね」を真に受けすぎない
ベトナム人は基本的にやさしいので、外国人がベトナム語を話すと「上手ね!」と褒めてくれます。若い人は特に勘がいいので、多少発音が変でも文脈で理解してくれます。
でもそれで安心してしまうと、間違った発音が定着してしまいます。先生も毎回細かく注意するのは気が引けるので、だんだん指摘してくれなくなります。結果として裸の王様状態になり、先生以外のネイティブに「hả?」と言われるわけです。
褒められるのはうれしいことですが、「まだ直すところがあるはず」という意識は常に持っておいたほうがいいです。
③ カタカナのルビを卒業する
テキストに書いてあるカタカナのルビは、最初のとっかかりとしては仕方がありません。でもいつまでもカタカナを頼りにしていると、ベトナム語の音が日本語の5母音に変換されたまま頭にインプットされてしまいます。
できるだけ早い段階で、カタカナではなくベトナム語の文字と音声をセットで覚える習慣に切り替えてみてください。生成AIの読み上げ機能やYouTubeのベトナム語動画など、ネイティブの音声に触れる手段は今はいくらでもあります。
ベトナム語の発音でよくある質問
まとめ|5つのクセを直せばベトナム語の発音は通じるようになる
日本人のベトナム語が通じない原因のほとんどは、日本語の口のクセが無意識に入り込んでいることでした。
この記事で紹介した5つのコツをおさらいします。
- 声調を日本語のアクセントで上書きしない。nặngが跳ね上がる、ngangが低すぎる、全部hỏiになる。まず1音節ずつ声調を切り替える練習から
- 母音の口をもっと大きく開ける。特に ê と e、o と ô と ơ の区別。自分が思っているより1段階大げさに開けるくらいでちょうどいい
- 語末の子音は寸止めで止める。口や舌をその位置に持っていくだけで、音は出さない。まずは -m, -n, -c, -t, -p の5つから
- 有気音と無気音を区別する。t と th の違いを、手のひらに当たる息の強さで覚える
- 二重母音・半母音をローマ字読みしない。文字を見ないでネイティブの音だけをコピーする練習が効果的
ベトナム語の発音はストライクゾーンが狭く、少しでも外れると通じません。でも裏を返せば、直すべきクセは決まっています。上の5つを意識して練習すれば、「hả?」と聞き返される回数は確実に減っていきます。
タイベオ先生完璧を目指す必要はありません。
大事なのは、ネイティブが聞いて意味を取れるレベルに到達すること。そのためのヒントとして、この記事が少しでも役に立てばうれしいです。





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