ベトナム料理といえば、「どうしてもあのパクチーが苦手…」と悩んでいる人は多いですよね。
美味しいと評判のローカルのフォーやバインミーにも、基本的にはパクチーがどっさり入っています。現地の言葉で正しく「パクチー抜き」を伝えないと、器から細かい葉っぱをちまちま避ける羽目になり、楽しいはずの食事の時間がストレスに変わってしまいます。
でも、実は「パクチー」という名前自体がベトナム語ではないって知っていましたか?
現地の食堂で「ノー・パクチー」と言っても通じないため、まずは正しい「パクチー抜きにしてください」のベトナム語を覚えましょう。
また、パクチー以外にもベトナム料理には多様は香草がつきものです。どんな香草やハーブがあるのかも知っておきましょう。
ハノイでベトナム人の妻と暮らし、日々ローカルの世界に浸っている私が、そもそもパクチーとはどんな野菜なのか、どんな効能があるのかなど、ベトナムの奥深い香草の世界までご案内します。
読み終わる頃には、意外と次回はハーブに挑戦しようという気になっているかもしれません。
タイベオ先生ベトナム旅行中の食事に不安がある方、現地のディープな食文化を知りたい方のお役に立てば嬉しいです。
- 北部・南部でのパクチーの正しい呼び方
- そもそもパクチーとは?(驚きの健康効果と丸亀製麺事情)
- パクチーだけじゃない!その他の強烈な香草たち
- 絶対に通じる「パクチー抜き・香草抜き」の確実な言い方
勘違い注意!「パクチー」はベトナム語ではありません

実は「パクチー」はタイ語です。「パクチー」はベトナム語では北部で「ザウムイ(Rau mùi)」、南部で「ンゴーリー(Ngò rí)」と呼びます。
ベトナムの屋台で、日本人観光客が「ノー・パクチー!」と必死に伝えているのによく分かってもらえず、結果的に山盛りの香草を出されているのをたまに見かけます。
日本にいると「東南アジアの香草=全部パクチー」というイメージができあがっていますが、そもそもベトナムのローカル食堂のおばちゃんに「パクチー」と言っても通じません。まずは、この言葉の正体と、ベトナムでの正しい呼び方を整理していきましょう。
パクチーの語源と、ベトナムでの正しい呼び方(北部・南部)
日本で広く定着している「パクチー」という名前、実はタイ語(ผักชี)です。 1990年代以降に日本でタイ料理などのエスニックブームが起きた際、この呼び名が一気に広まりました。そのため、「ベトナム料理に乗っている葉っぱもパクチー(という名のベトナム語)」だと勘違いしている人が非常に多いのです。
ベトナム語でパクチーを指す言葉は、縦に長い国らしく、地域によってまったく異なります。 ハノイやハロン湾がある北部エリアでは「Rau mùi(ザウムイ)」と呼ばれます。Rau(ザウ)は「野菜」、mùi(ムイ)は「匂い」という意味で、直訳するとそのまま「匂いのする野菜」です。
一方、ホーチミンを中心とした南部エリアでは「Ngò rí(ンゴーリー)」または短く「Ngò(ンゴー)」と呼ばれます。
同じ国でもここまで呼び方が違うのは面白いですね。行く都市に合わせて正しい名前を知っておく必要があります。

パクチーってどんな香草?どんな匂いがする?(別名「カメムシ草」の真相)

パクチー(コリアンダー)はセリ科の植物で、葉は細かくギザギザしており、非常に柔らかいのが特徴です。 匂いについては、好きな人からは「爽やかで柑橘系のような香り」と絶賛されますが、苦手な人からは「石鹸の匂い」「プラスチックを溶かしたような匂い」と表現されます。
日本では昔から、その強烈な青臭さから別名「カメムシ草」と呼ばれる事もありました。
遺伝子レベルで「パクチーの匂いを石鹸のように感じてしまう(苦手だと感じる)人」が一定数いることも研究で分かっています。「ただの食わず嫌い」ではなく、本当に体が受け付けないケースもあるので、苦手な人は無理して食べる必要はまったくありません。
なぜベトナム人はそんなにパクチーが好きなのか?
ベトナム人がよく香草を食べるのは、高温多湿なベトナムにおいて、食欲増進や消化の助け、強力なデトックス作用といった「理にかなった健康効果」があるからです。
ベトナム人の妻やその家族と食事をしていると、パクチーをはじめとする香草をまるでサラダのようにムシャムシャと食べる姿にいつも驚かされます。料理の「少しだけ添える薬味」や「飾り」という日本の感覚とはまったく異なり、彼らにとっては「メインのおかず」と同じくらい食卓に欠かせない存在です。
では、なぜ彼らはあれほど強烈な匂いのする葉っぱを好んで大量に食べるのでしょうか。実はそこには、現地の厳しい気候を乗り切るための理にかなった理由がありました。
驚きの健康効果(胃腸への働き・デトックス力)
ベトナムは年間を通じて高温多湿で、特に夏場は少し外を歩くだけで体力が奪われます。そんな過酷な環境で役立つのが、パクチーが持つ強力な健康効果です。
パクチーには、独特の香りで胃の働きを活発にして食欲を増進させる効果や、消化を助ける働きがあります。さらに、ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化作用が豊富で、体内の老廃物や不要な重金属を排出する「デトックス効果」も非常に高いとされています。
つまり、美味しくて安いフォーなどの炭水化物と一緒にパクチーを山盛り食べることは、夏バテを防ぎ、胃腸を整えるための最も手軽で効果的な体調管理法になっています。彼らがパクチーを愛するのは、単に味が好きだからというだけでなく、暑い気候のなかで体が自然に求めているからなんですね。
衝撃!ベトナムの「丸亀製麺」はパクチーが入れ放題

ベトナムの人々のパクチー愛を最も象徴する、面白いエピソードがあります。 日本でもおなじみのうどん店「丸亀製麺」はベトナムにも進出しており、現地の人々から大人気を集めています。
日本の丸亀製麺といえば、レジ横で「青ネギ」や「天かす」がかけ放題になっているのが特徴ですよね。なんと、ベトナムの丸亀製麺では、その無料の薬味コーナーに細かく刻まれたパクチーが山積みにされています!
現地の若者たちは、温かい肉うどんの上に青ネギと同じような感覚でパクチーをとんでもない量(うどんが見えなくなるくらい)乗せて、美味しそうにすすっています。和風のだしと強烈なパクチーの香りは日本人からすると不思議な組み合わせに思えますが、これが現地ならではの楽しみ方です。
「ネギの代わりにパクチーを盛る」のが当たり前だと考えると、彼らの香草への執着心がいかに強いかがよく分かります。
ベトナム料理はパクチーだけじゃない!さらに強烈な「その他の香草」

ベトナムの香草ラインナップにおいてパクチーは氷山の一角です。ベトナムではノコギリパクチー(ンゴーガイ)、ミント、バジル、さらにはドクダミまで、様々な香草(ザウトム)が料理に合わせて盛られてきます。
実は、「現地の言葉でパクチーさえ抜けば、ベトナム料理はもう安心だ」と油断していると、思わぬ罠に引っかかることがあります。
ベトナム料理において、パクチーはあくまで数ある香草の中の1つに過ぎません。パクチー以外の葉っぱが山盛りに添えられてきたり、最初からスープに別の香草が刻まれて入っていたりするからです。 ここでは、知らずに食べると驚いてしまう代表的な強烈ハーブをいくつか紹介します。
パクチーより強烈な「ノコギリパクチー(Ngò gai)」

ホーチミンで牛肉のフォーを頼んだとき、高い確率でスープの中に潜んでいるのが「Ngò gai(ンゴーガイ)」、日本語ではノコギリパクチーと呼ばれる葉っぱです。
その名の通り、葉のフチがノコギリのように細かくギザギザしていて、少し硬い手触りをしています。これが非常に厄介で、本家のパクチーよりも香りが濃く、より強烈な青臭さを持っています。 牛肉の臭みを消すために定番の薬味として使われますが、パクチーが苦手な人にとってはかなり手強い存在かもしれません。
タイベオ先生私は個人的に美味しいと思います
関連記事:ベトナムのフォーはどんな味?ハノイ在住10年の本音レビューと美味しい食べ方

フォーや生春巻きに欠かせない定番のハーブたち
ノコギリパクチー以外にも、ベトナムの食卓には様々な香草が並びます。
例えば、生春巻きやブンチャー(つけ麺)を頼むと、カゴに山盛りになって出てくるのがオリエンタルバジル(Húng quế/フンクエ)や、ミント(Húng lủi/フンルイ)です。これらはイタリア料理などで使われるものより野性味が強く、噛むとスーッとした強い刺激があります。

さらに、日本人にとって最も意見が分かれるのがドクダミ(Diếp cá/ジエプカー)です。日本では干してお茶にして飲むことが多いですが、ベトナムでは生のまま葉っぱを食べます。少し生臭いような独特の風味があり、油っこい料理と一緒に食べると口の中がさっぱりするからと現地の人は好んで食べます。
ベトナム語でこうした香草全般のことを「Rau thơm(ザウトム)」と呼びます。直訳で「香りの野菜」という意味ですが、この言葉を知っておくことが、香草が苦手な人にとっては次の「香草回避術」の大きな鍵になります。
(実用編)やっぱり無理!な人のための「パクチー抜き」の言い方
パクチーだけ抜きたい時は「ホン・ザウムイ(Không rau mùi)」、香草が全般ダメな時は「ホン・ザウトム(Không rau thơm=香草全部抜き)」と伝えます。
ここまでの解説で、「どうしてもあの香りは無理そうだから、現地の言葉でしっかり断れるようになりたい」と感じた方も多いはずです。 せっかくの旅行なのに、毎回の食事で葉っぱを避けるのに必死になっていてはもったいないですよね。ここでは、ローカルの屋台からレストランまで、注文時に通じる実用的なフレーズをまとめました。
「パクチー抜きにしてください」の正確なフレーズ
料理から純粋にパクチー(コリアンダー)だけを抜いてほしい場合は、英語の「No」にあたるベトナム語の否定形「Không(ホン)」を使います。
【ハノイなどの北部に行く場合】
Không rau mùi(ホン・ザウムイ) より少し丁寧にするなら「Không cho rau mùi(ホン・チョー・ザウムイ)」と言います。「cho(チョー)」は「入れる」という意味です。
【ホーチミンなどの南部に行く場合】
Không ngò rí(ホン・ンゴーリー) こちらも同じく「Không cho ngò rí(ホン・チョー・ンゴーリー)」と言うと、「パクチーを入れないで」という正確な表現になります。
注文の際に、店員さんの目を見て手で「バツ印」でも作りながらはっきりと伝えれば、しっかりと抜いて料理を作ってくれます。
確実に香草トラップを防ぐなら「全部抜き」がおすすめ
先ほど説明した通り、パクチーだけを抜いても、ノコギリパクチーやミントといった別の香る葉っぱが入ってきてしまう可能性があります。
もし「東南アジア系の匂いがする葉っぱは全部苦手!」という場合は、一つひとつ名前を指定するのではなく、香草そのものをすべて避ける確実なフレーズを使いましょう。
- Không rau thơm(ホン・ザウトム)
- (丁寧な言い方)Không cho rau thơm(ホン・チョー・ザウトム)
Rau thơm(ザウトム)は香草全般を表す言葉なので、これを伝えればクセのある葉っぱはすべて抜いてもらえます。「発音が通じるか不安…」という場合は、注文時にスマホでこの画面の『Không cho rau thơm』の文字を店員さんに指差して見せるのが、いちばん手軽で確実です。
ベトナムのパクチー事情に関するよくある質問(FAQ)
コリアンダーとの違いや、スーパーでの購入事情など、パクチーに関するよくある疑問にお答えします。
パクチー、コリアンダー、シャンツァイ(香菜)の違いは何ですか?
すべて「同じ植物」を指しています。違いは言語だけです。
- パクチー:タイ語
- コリアンダー:英語(主に種子やスパイスとして呼ばれることが多いです)
- シャンツァイ(香菜):中国語
東南アジア料理のブームで「パクチー」という呼び方が日本では定着しましたが、欧米の旅行者に話すときは「コリアンダー」や「シラントロ(アメリカでよく使われるスペイン語)」と言った方がすんなり通じます。
ベトナムのスーパーでパクチーは買えますか?
はい、どこのスーパーやローカル市場の野菜コーナーでも山積みになって売られています。
しかも日本に比べて驚くほど安く、両手で抱えるほどの大きな束が数十円(数千ドン)程度で買えてしまいます。長期滞在する方や、キッチン付きのホテルに泊まる「パクチー好き」な方は、スーパーで買ってきてインスタントのフォーに追加するのも現地の楽しみ方のひとつです。

「パクチーを少しだけ入れてほしい」時はどう言いますか?
「少しだけ」はベトナム語で「một ít(モッ・イッ)」と言います。
- 北部:Cho một ít rau mùi(チョー・モッ・イッ・ザウムイ)
- 南部:Cho một ít ngò rí(チョー・モッ・イッ・ンゴーリー)
「全部抜いて(ホン・チョ〜)」と断るのではなく、このように伝えれば「風味付け程度」にパラパラと適量を乗せてくれます。
まとめ:パクチーを知ればベトナム旅行はもっと楽しくなる!
今回は、ベトナムのパクチー(香草)事情について深掘りしました。
- パクチーはタイ語:ベトナム語では北部「ザウムイ」、南部「ンゴーリー」です。
- 香草は健康の源:ベトナム人が大量に食べるのは、暑い国で胃腸を守りデトックスするためという理にかなった理由があります。
- 香草抜きは「ホン・ザウトム」:パクチー以外の強烈ハーブも避けたいなら、香草全般を指す「ザウトム」を使うのがいちばん確実な回避術です。
ベトナムの香草は、最初は驚くかもしれませんが、その独特の香りはベトナムの風景や活気と深く結びついています。苦手な方は無理せず「全部抜き」で料理本来の味を楽しみ、少し興味がある方はぜひ、現地ならではの「驚きのある食体験」として一口挑戦してみてください。
知識を持って向き合えば、ベトナム旅行の食事はもっと安心で、もっと奥深いものになるはずです。それでは、現地でお会いしましょう!





ベトナム語に関する質問、ご感想があればお寄せ下さい!