ベトナム人はあまり Cảm ơn(ありがとう)って言わないって聞いたんですけど、本当ですか?
あなたもこんなこと聞いたことがあるかもしれません。
え、「ありがとう」を言わないって、そんな恩知らずな?
日本人の感覚からすると、つい、そのように思ってしまいますが、でも実際のところどうなんでしょうか。
この記事では、ベトナム在住の筆者が現地で暮らしてみて感じた、ベトナム人がもつ「Cảm ơn」の感覚について思ったことをシェアしていきたいと思います。
ベトナム語で「ありがとう」の丁寧な言い方や、発音の仕方については別の記事で詳しく紹介しています。
- ベトナム人はあまりお礼を言わないのは本当なのか?
- ベトナム人がいちいち「ありがとう」と言わない本当の理由
- ベトナム人が「ありがとう」とお礼を言うのはどんなときか?
ベトナム人は「ありがとう」とお礼を言わないのは本当?
さて、ベトナムの人は本当に「ありがとう」と言わないのでしょうか。
結論から言うと、そんな事はありません。ベトナム人もちゃんと「ありがとう」とお礼を言うときは言います。
ただ、実際に、現地で生活しているとベトナム人はあまりお礼を言わないなと感じることも、確かにあります。
例えば、こんな場面でベトナム人はあまりお礼を言いません。
ベトナム人が お礼 を言わない場面
- お客がお金を支払ったとき(ローカルの市場)
- 親しい関係にある人に対して
- ちょっとした親切な行為を受けたとき
日本人の感覚だと、このような場面では必ず「ありがとうございました」とか「ああ、どうもすみません」とか言いますね。
わたしは自分がお客さんなのに、ものを買ったあと、店員につい「ありがとう」と言ってしまうことすらあります。
では一方、なぜ、ベトナム人の口からは「ありがとう」があまり出てこないのでしょうか。
ベトナム人があまり「ありがとう」とお礼を言わない理由
ベトナム人があまり「ありがとう」とお礼を言わないように日本人であるわたしたちが感じてしまうのは、
そもそもベトナム人と日本人の間で文化が異なるからです。
お礼を言わないからと言って、必ずしも「恩知らず」とか、「感謝の気持がない」とか、そういうわけではないのです。
逆にわたしが外国に住んでいて思うのは、日本人は「ありがとう」言い過ぎ、人からの「ありがとう」期待しすぎの文化があります。
ベトナム人が「ありがとう」と言わない理由として考えられるのは次の3つの点です。
ベトナム人がありがとうと言わないのは、
- ベトナムは助け合いの文化だから
- Cảm ơn =「感恩」は本当に恩を感じるときに発する言葉だから
- 身内だから
では、それぞれ解説していきます。
ベトナムは助け合いの文化
それは、ベトナム人は助け合うのが当たり前の文化の中で育ってきているからです。
助けて当然、あるいは助けてもらって当然、という感覚なのだと思います。
特に農村部や、年配者の間ではその感覚が強いと思います。
しかし、近代都市化された現代の若者たちの間では、世界標準の「ありがとう」の感覚を持っていると感じます。
ベトナム語で「ありがとう」は「感恩」
Cảm ơn は漢字で書くと 感恩 になります。
「感恩」ですから、友達や親族同士の、日常のちょっとした親切や手助けは、「恩」を感じるようなことではないわけというわけです。
身内だから助けて当然、という感覚です。
なので、逆にベトナム人の側からすると、友達のあなたから Cảm ơn を連発されると、「え、私たちってまだ親しくなかったの?!」と、よそよそしい気持ちになるようです。
なので、あなたの周りのベトナム人が「ありがとう」を言っていないように感じても、気を悪くしないでくださいね。
あなたのことを、それだけ親しく感じているということの表れなのかもしれません。
身内以外の人へは?
親しくない人や、見知らぬ人に親切にしてもらったときには、ベトナム人は普通に Cảm ơn を使っています。
わたしも、街で何かちょっとした手助けをしたときなど Cảm ơn anh! と言われます。
というわけで、逆に親しい仲なのに「ありがとう」を連発されると、ベトナムの文化では違和感を感じてしまうというわけです。
ただ、これも農村部と都市部、また、世代によっても対応は異なってきます。
農村部では、みんなが身内みたいなものなので、「助け合って当たり前」という感覚が強いと思います。
接客業における「ありがとう」
さて、ものを買ったときなどですが、
ベトナムでは店員がお金を払ってくれた客に対して「ありがとう」を言いません。
これはほとんど聞いたことがありません。
「売ってやってる」みたいな態度に感じることもあります。
ここは、もしかすると日本人にとって、一番違和感を感じる点かもしれません。
でも、海外に住んでわかるのが、日本の接客の仕方が特別だということです。
日本の「お客様は神様」という文化で育ってきていると、それが当たり前だと思いこんでいますが、意外と世界では、売る人と買う人が対等というのが標準なのかもしれませんね。
久々に帰国すると、コンビニのおばちゃんの、なんてことはない、丁寧な言葉遣いと、丁寧な接客に思わず感動して、
「ああ、これが日本だ」
としみじみと噛み締めながら、店の外に出るものです。
都市部での接客業はグローバルスタンダード
これは、わたしが街のカフェで見かけた表示ですが、
“Khách hàng mới là người trả lương cho bạn.”
と書いてあります。
これは
「お客様こそが、あなたに給料を支払っている人です」
という意味です。
都市部では、外国人を相手にした、ホテルやレストランなどの接客業においてはしっかり「ありがとう」が使われています。
Cảm ơn は心の距離感
ベトナム語を学習していると、日本人は cảm ơn と言いすぎだ、と指摘されることがあります。
たしかにそうかも知れません。
ベトナム人は、自分との間に距離がある人に対して、 Cảm ơn を使います。
そのため、知り合いなのに Cảm ơn を言い過ぎると、そこに、「意図」を感じるようです。
あなたとわたしはまだ他人です
あえてそう言っているぐらいのニュアンスが含まれてしまいます。
なので、ベトナム人があなたに「ありがとう」を言わなかったとしても、それは必ずしも「恩知らず」というわけではなく、
文化の違いなんだ
そう思っていただければいいと思います。
日本とベトナムで「ありがとう」についてずいぶん大きな認識の違いがあるわけですね。
記事を最後まで読んでくださってありがとうございました!(ここは日本式に)
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