仕事終わりや同僚との会話で使う「お疲れ様」。
ベトナム人の同僚にも言いたくて、「お疲れ様 ベトナム語」とGoogle検索してみたら……
出てきたのは、「làm tốt lắm(よく頑張ったね)」。

一見、正しそうに見えますが―実はこれ、日本語の「お疲れ様」とはちょっとズレた表現なんです。
日本語の「お疲れ様」は、あいさつ・ねぎらい・別れの言葉など、とても幅広い場面で使える万能フレーズです。
でも、ベトナム語には「お疲れ様」にぴったり対応する言葉がないため、直訳すると不自然になることも多いことを覚えておいて下さい。
そこで本記事では、ベトナム在住の筆者が、実際の職場でいつも使う
- 自然で失礼のないベトナム語の“お疲れ様”フレーズ
- 目上・同僚・部下に合わせた言い換え
- お先に失礼します」や別れ際の言い回し
など、場面ごとにすぐ使えるフレーズを実例つきで紹介します。
「Google翻訳だけじゃ分からなかった!」という方こそ、ぜひチェックしてみてください。
- 「お疲れ様」「お先に失礼します」に対応する自然なベトナム語フレーズ
- 丁寧な場面・カジュアルな場面での言い方の使い分け
- ベトナムの職場でよく使われる別れのあいさつ表現
- Google翻訳では伝わりにくい、実際の会話で使われる言葉のニュアンス
ベトナム語に「お疲れ様」は存在するのか?

日本語で日常的に使われる「お疲れ様」は、職場でのあいさつ、労い、別れ際の一言として非常に便利な表現です。
しかし、ベトナム語には日本語の「お疲れ様」とまったく同じ意味や使い方を持つ言葉は存在しません。
とはいえ、「お疲れ様」に近いニュアンスを持った言い回しはあります。ただし、それらは状況や相手との関係性によって使い分けられます。つまり、直訳では対応しきれない表現だからこそ、シーン別に自然な使い方を覚える必要があります。
まずは、「お疲れ様」をGoogle翻訳するとどうなるか、見てみましょう。
Google翻訳に出てくる「làm tốt lắm」は正しいの?

「ベトナム語 お疲れ様」と検索すると、Google翻訳では「làm tốt lắm(よくやった、よく頑張った)」という訳が表示されます。

このフレーズ自体はどちらかというと、上の立場から褒める表現で、ビジネスシーンでの挨拶に使うのは明らかにおかしいです。
実際に誰かが良い仕事をしたときに、その労をねぎらう言葉として使われますが、日本語で言うところの「お疲れ様」の意味を伝えていません。
「làm tốt lắm」をあえて使うとすれば、たとえばプロジェクトの成功後や、大きな努力をねぎらいたい場面など、特別な状況でのみ自然に使われます。
そのため、このGoogle翻訳は使えません。
Google翻訳に出てくる「お疲れ様でした」は正しい?

ちょっとだけニュアンスを変えて、退勤時の挨拶で日本でよく使われる「お疲れ様でした」はどうなるのでしょうか。
「お疲れ様でした ベトナム語」とGoogle検索すると「Cảm ơn vì sự làm việc chăm chỉ của bạn」と出てきます。
この表現は、直訳すると「あなたの一生懸命な働きに感謝します」という意味になります。文章としては丁寧で意味も通じますが、実際のベトナム語会話ではほとんど使われない不自然な言い回しです。
ベトナムでは、職場の終業時にこのような感謝の文を直接言葉にすることは、まずありません。
むしろ、「先に帰ります」「また明日」「帰るね」など、具体的な行動を表すフレーズを用いて、間接的にねぎらいの気持ちを伝えるのが自然なスタイルです。
「お疲れ様」の直訳表現で紹介される「Anh đã vất vả rồi」も不自然!
多くのベトナム語ブログでは、日本語の「お疲れ様」をそのままベトナム語に置き換えた、「Anh đã vất vả rồi(あなたは苦労されましたね)」というような表現が紹介されていますが、これも日常の場面では聞いたことがありません。

このフレーズは、確かに労をねぎらう意味では使われますが、非常にフォーマルで、かつ相手が本当に大変な仕事を終えたような場面で使われます。日常のあいさつとしてはやや大げさで、頻繁に使うと違和感を与えることがあります。
また、ベトナム語では、相手の年齢や立場によって人称や語尾が変わるため、「お疲れ様です」「お疲れ様でした」という表現を機械的に訳すのではなく、状況に応じた自然なフレーズを選ぶことが大切です。
では、ちょっと引っ張りましたが、本題に入ります。シーン別に「お疲れ様」に近いベトナム語表現を紹介していきます。

ベトナム語では、言葉そのものよりも「どのような場面で」「どのように伝えるか」が重要になります。

ベトナム語で「お疲れ様でした / お先に失礼します」はどう言う?【先に帰るとき】
日本語で「お疲れ様でした」は、退勤時やその場を離れるときに使われる定番のあいさつです。しかしベトナム語には、それに完全に一致する表現は存在しません。
ベトナムでは、「私は先に帰ります」という言い回しを使うことで、間接的に相手へのねぎらいや挨拶の気持ちを表すのが一般的です。
このときの言い方は、フォーマルな職場や上司との関係、あるいは同僚や年下とのカジュアルな関係など、相手との距離感によって使い分ける必要があります。

ここでは、ベトナム語で「お疲れ様でした」に相当する言い方を、シーン別に紹介します。
丁寧な言い方「Em xin phép về trước」

もっとも丁寧で改まった言い方が
Em xin phép về trước.(エム シン フェップ ヴェー チュオック)
です。
この表現は、「お先に失礼します」にあたるもので、目上の人や上司に対して使います。
- Em:自分が年下の立場であることを示す一人称
- xin phép:許可を求める(失礼します)
- về trước:先に帰る
この一言だけで、「私は先に失礼しますが、あなたはまだ働いておられます。お疲れ様です」といったニュアンスが含まれています。丁寧で礼儀正しい言い回しとして、職場ではよく使われます。
カジュアルな言い方「Em về trước nhé」
同僚や親しい関係の相手に対しては、もう少しくだけた表現が使えます。
その場合は
Em về trước nhé.(エム ヴェー チュオック ニェー)
という言い方が自然です。
これは直訳すると「先に帰るね」という意味で、語尾の nhé は「〜ね」「〜よ」のような柔らかい語調を表します。
カジュアルではありますが、相手との関係に配慮がある表現で、年下が年上に対しても使える、礼儀を失わない言い回しです。
年上・年下で変わる表現の使い方
ベトナム語では、相手との年齢差や関係性によって、主語や語尾を変えるのが基本です。
たとえば、自分が年上の場合は次のように一人称を変えます:
- Anh về trước nhé.(年上の男性が言う場合)
- Chị về trước nhé.(年上の女性が言う場合)
このように、「Em」「Anh」「Chị」などの一人称や二人称を状況に応じて使い分けることは、ベトナム語における礼儀の基本です。
また、相手が先に帰るときには、次のように返事をします:
- Vâng, chị về ạ.(はい、お先に失礼します/丁寧)
- Ừ, em về nhé.(うん、お疲れ〜/カジュアル)
ベトナム語には「お疲れ様でした」のような定型句はありませんが、こうした一連の自然なやり取りによって、互いをねぎらう気持ちを伝え合っています。

無理に翻訳しようとするよりも、こうしたフレーズを状況ごとに覚えて使うことで、より自然で心のこもったコミュニケーションができるようになります。

先に帰る同僚へ「お疲れ様」と声をかけるベトナム語表現
自分が先に帰るときだけでなく、同僚が「お先に失礼します」と言って帰るときに、「お疲れ様でした」と声をかけたい場面もありますよね。
日本語ではこの場面でも「お疲れ様です」や「お気をつけて」といった言葉が自然に出てきますが、ベトナム語では少し違った表現になります。

ここでは、帰る人への自然な返し方・見送り方の表現をご紹介します。
「Về nhé」や「Vâng, chị về ạ」の自然な返し方
ベトナム語では、相手が「Em về trước nhé(先に帰りますね)」などと言った場合、返す言葉は状況によって変わります。
- Ừ, về nhé. 「うん、気をつけて」や「了解、またね」のような軽い返事です。 親しい同僚や年下の相手によく使います。 Ừ は「うん」という相づちに近く、くだけた印象があります。
- Vâng, chị về ạ. 「はい、お疲れ様でした」のような意味で、年上や目上の人に対して使います。 Vâng は丁寧な「はい」、ạ は語尾につける敬語要素で、丁寧な印象を与えます。
- Chúc về nhà an toàn.(無事に帰ってくださいね)というように、丁寧な気遣いの言葉を添えることもありますが、口語ではあまり形式ばった表現は使われません。

「帰るね」が「お疲れ様」になる文化的背景
ベトナム語では、「お疲れ様でした」というようなあいさつを明示的に口にする文化がありません。
その代わりに、行動をそのまま表現することで、気持ちを伝えるという特徴があります。
たとえば:
- 相手が「Chị về đấy(帰るね)」と言えば、 自然な返しは「Ừ, chị về nhé(うん、気をつけて)」のような一言です。
- 何も言わずに出ていく場合でも、「Mai gặp lại(また明日)」と返すだけで、十分に気遣いのある表現になります。
年下の同僚:Em về trước nhé.
お先に失礼しますね。
自分:Ừ về nhé.
はい、お疲れ。
年上の同僚:Chị về đấy.
帰るね。
自分:Vâng, chị về ạ.
お疲れさまでした。
このように、ベトナム語では直接的に「労をねぎらう」言葉を使わなくても、関係性や語調、言い回しのトーンで気持ちを伝えるのが一般的です。
「お疲れ様」という感覚は文化として共有されていないかもしれませんが、別れ際にひと言添える心遣いは、ベトナムでもとても大切にされています。
仕事中の「お疲れ様です」はベトナム語で何て言う?
日本では、職場ですれ違うときや、業務の合間に声をかけるとき、電話の最初のひと言などで「お疲れ様です」を使うことが多くあります。
一日に何度も交わされる、非常に便利で万能なあいさつです。
しかしベトナム語には、こうした場面で使われる「お疲れ様です」に相当する定型表現は存在しません。
ベトナムでは、一日に何度も挨拶を交わす習慣がなく、一日の最初の挨拶が済めば、それ以降は特に言葉を交わさず自然に会話を始めることが一般的です。
たとえば朝に顔を合わせたときには:
- Chào anh / chị.(おはようございます/こんにちは) 目上の相手に対する丁寧な挨拶
- Em chào anh / chị.(年下から年上への丁寧な挨拶)
こうしたあいさつが一度交わされれば、その後は改めて何度も言うことはあまりありません。
代わりに、以下のような表現で自然に会話を始めたり、軽く呼びかけたりします。
- Anh Nam.
- Chị Hà.
- À Tâm!
名前だけを呼んで、軽く注意を引くスタイルです。これは、ベトナム人同士では非常に自然なやり取りです。
また、名前が分からない場合でも、以下のように人称代名詞を呼びかけることで会話を始めることができます。
- Chú.(おじさん、年配の男性)
- Cô.(おばさん、年配の女性)
これらの表現に、ねぎらいの言葉や敬意を込める文化的な意味合いが含まれていることもあります。
つまり、日本語の「お疲れ様です」が担っているあいさつ+敬意の役割を、ベトナム語では人称の使い方や話し方のトーンでカバーしているのです。
このように、ベトナム語では「お疲れ様です」と同じ単語は存在しませんが、代わりにその場の空気や相手との関係性に合わせて、より柔軟にコミュニケーションが取られているのが特徴です。
「お疲れ様」に似たその他のベトナム語フレーズ
ベトナム語には、日本語の「お疲れ様」のように、どんな場面でも使える万能のねぎらい表現はありません。
その代わり、場面や関係性に応じて、自然な別れのあいさつや一言フレーズを使い分けるのが一般的です。
ここでは、ベトナム人同士のやりとりでよく耳にする、「お疲れ様」に代わるような親しみのある表現をご紹介します。
「また明日」「バイバイ」も実はよく使われる
日本では「お疲れ様でした」が別れのあいさつとして広く使われますが、
ベトナムではその代わりに以下のようなフレーズが頻繁に使われます。
- Mai gặp lại.(マイ ガップ ライ) 「また明日ね」という意味で、翌日も顔を合わせる相手に使える定番表現です。
- Bye bye.(バイバイ) カジュアルな関係では、英語の「バイバイ」もそのまま使われます。 実際の会話でも、日本語の「お疲れ〜」に近いニュアンスで気軽に使われています。
- Hẹn gặp lại.(ヘン ガップ ライ) 「また会いましょう」の意味で、次に会う日が決まっていないときにも使える丁寧な別れの言葉です。
これらはどれも、労いの気持ちを直接表現しているわけではありませんが、
別れ際のやりとりとして十分に自然で、ベトナム人にとっても馴染みのある言葉です。
「Về thôi!(帰ろう!)」が持つ共感的ニュアンス
もうひとつ、日本語の「お疲れ〜」のような使い方ができるのが、
Về thôi!(ヴェー トーイ) という表現です。
- Về=帰る
- thôi=〜だけにしよう、もうそれくらいにしよう
直訳すると「帰るだけにしよう」となりますが、実際には「よし、帰ろうか!」というような、仲間内での共感や連帯感を込めた別れの一言として使われます。
たとえば残業明けや仕事を終えたときに、同僚同士で「Về thôi!」と言い合うことで、「今日も頑張ったね」「もう十分働いたよね」といった無言のねぎらいが含まれるのです。

日本語の「よし、帰ろっか」「じゃあ今日はこのへんで」といった表現と非常に似たニュアンスを持っており、実は「お疲れ様」に最も近い感覚かもしれません。
このように、ベトナム語では「お疲れ様」という単語自体は存在しなくても、それに代わる自然な別れの言葉や共感の表現がたくさんあります。文脈や人間関係に合わせてこうしたフレーズを使い分けることで、よりスムーズな会話ができるようになります。
よくある質問(FAQ)
ベトナム語で「お疲れ様です」は何と言いますか?
ベトナム語には「お疲れ様です」に完全に一致する表現はありませんが、状況によって「Em chào anh/chị.(こんにちは)」や、名前を呼ぶだけで挨拶を済ませることが多いです。業務中のあいさつとしては、自然な方法です。
「お疲れ様でした」はベトナム語でどう言えばいいですか?
「お疲れ様でした」に近い表現として、「Em xin phép về trước.(お先に失礼します)」がよく使われます。これは帰る際の丁寧なあいさつとして自然で、目上の人にも使える表現です。
ベトナム語で「お先に失礼します」はどう言いますか?
丁寧に言う場合は「Em xin phép về trước」、カジュアルな場面では「Em về trước nhé.」が使われます。年齢や立場によって「Anh về trước nhé」「Chị về trước nhé」など人称が変わります。
「お疲れ様」の代わりにベトナムでよく使われる言い回しはありますか?
「Mai gặp lại(また明日)」「Về thôi(帰ろう)」「Bye bye」などがよく使われます。直接的に「労い」を表現するよりも、別れ際の一言で気持ちを伝えるのが一般的です。
Google翻訳で出てくる「làm tốt lắm」や「Cảm ơn vì sự làm việc chăm chỉ của bạn」は使えますか?
直訳の意味としては正しいですが、日常の軽いあいさつとしてはやや不自然で、実際の会話ではあまり使われません。大変な仕事を終えた人にねぎらいの気持ちを伝えたいときなど、特別な場面で使うのが適しています。
まとめ
ベトナム語には日本語の「お疲れ様」にぴったり対応する表現はありませんが、シーンごとに自然な言い方を使い分けることで、気持ちをしっかり伝えることができます。
退勤時には「Em xin phép về trước」、
カジュアルな場面では「Em về trước nhé」や「Về thôi」などがよく使われます。
言葉そのものよりも、関係性や状況に合った表現を選ぶことが大切です。

この記事を参考に、ベトナム語でのあいさつやねぎらいの一言を自然に使えるようになってくださいね。
ベトナム語に関する質問、ご感想があればお寄せ下さい!