こんにちは、ハノイ在住10年のタイベオです。
ハノイは飯も旨く、レトロでおしゃれなカフェがいっぱいある素敵な街ですが、一つ重大な欠陥があります。
それは、とにかく空気が汚いことです。
実はここ数年、特に冬の時期のハノイの大気汚染は深刻で、数キロ先が全く見えないぐらいの状態です。
外に出ると、なんとも言えない煤煙の残り香のような変な匂いがし、マスクをしていても喉が、いがらっぽくなります。
そんなハノイ民のリアルな暮らしはどうなのか、この記事でリポートしたいと思います。
またハノイの大気汚染がなぜここまで深刻になってきているか、その原因についても、旅行や移住を計画されている方のための対策についても書いていきたいと思います。

ハノイが好きなので、本当はあまり知られたくない事実ですが、皆さんにもこの悲惨な現状を伝えておかねば、とキーボードを叩いています。
- ハノイの大気汚染の現状
- ハノイの大気汚染がひどくなる時期
- ハノイの大気汚染の原因ってそもそも何?他の地域は?
- ハノイに実際に住んでみてどうか
- これからハノイに来る人が取るべき対策
ハノイの大気汚染は世界ワースト級の深刻さ

ハノイの大気汚染は、想像以上に深刻です。2024年には何度も「世界で最も大気汚染がひどい都市」としてランキングで1位になりました。その後も常に世界のワースト10〜20位内に入る状況が続いています。
東南アジアの首都の中では、バンコクやジャカルタよりも深刻で、むしろ中国の重工業都市や南アジアの大都市に匹敵するレベルの汚染度です。普段は青空が見えることがなく、灰色や白っぽい空に覆われていることが多いのです。
私が初めてハノイに来た10年前は、まだそこまでひどくなかったのですが、近年は急速に悪化しています。特に2017年以降、冬の時期は「ハノイスモッグ」とまで呼ばれるようになりました。
実際にハノイではどれぐらい大気汚染が深刻なのか
ハノイの大気汚染の深刻さを具体的な数値で見てみましょう。
世界保健機関(WHO)の基準では、PM2.5の年間平均値が10µg/m³以下が望ましいとされていますが、ハノイの年間平均値は40〜50µg/m³と、WHOの基準の4〜5倍にも達しています。
特に冬季の11月から2月にかけては、一日の平均値が100〜200µg/m³を超える日も珍しくありません。最悪の日には300µg/m³を突破することもあります。これは「非常に危険」なレベルとされる値です。
私の実体験では、こんな日には街を歩くと目がチカチカしたり、のどがイガイガしたりします。鼻の奥に煤煙の香りのような不快感があり、帰宅して目の周りをティッシュで拭くと真っ黒になっています。
最も直感的にわかりやすいのは視界の悪さです。普段なら見えるはずの街のランドマークが霞んで見えなくなります。私の住まいからは向かいのビルが見えるはずですが、大気汚染がひどい日には向かい側がすっぽり見えなくなることもしばしばです。
PM2.5とは?なぜ健康に悪いのか
大気汚染を語る上で最も重要な指標のひとつが「PM2.5」です。
このPM2.5が危険な理由は、その小ささにあります。あまりにも小さいため、鼻や喉の粘膜でキャッチできず、そのまま肺の奥深くまで入り込んでしまいます。さらに悪いことに、血液中にも入り込み、全身に運ばれてしまうのです。
PM2.5の健康への影響には以下のようなものがあります:
- 呼吸器系疾患(気管支炎、肺炎、喘息の悪化など)
- 心血管系疾患(心筋梗塞、脳卒中など)
- 発がんリスクの上昇
- 子供の発達への悪影響
- 免疫系の弱体化
WHO(世界保健機関)の調査によると、世界中で年間約700万人が大気汚染に関連する病気で亡くなっているとされ、その多くがPM2.5による影響です。
短期的には、目の痛み、のどの痛み、咳、頭痛などの症状が現れます。

私自身も、ハノイで大気汚染がひどい日には、なんとなく体がだるく、集中力が落ちるのを感じます。
AQI(空気質指数)の見方と目安
ハノイの大気汚染状況を知るには、AQI(Air Quality Index:空気質指数)という指標を見るのが一般的です。これは、PM2.5やPM10、一酸化炭素などの複数の汚染物質の濃度から計算される総合的な指数です。
AQIの見方は以下の通りです:
- 0〜50(緑):良好。健康への影響はほとんどなし。
- 51〜100(黄):普通。特に敏感な人は影響を受ける可能性あり。
- 101〜150(オレンジ):敏感な人にとって健康に良くない。
- 151〜200(赤):健康に良くない。誰もが影響を受ける可能性あり。
- 201〜300(紫):非常に健康に良くない。健康への警告。
- 301以上(茶色):危険。健康への緊急警告。
ハノイでは、冬季には「赤」から「紫」、最悪の日には「茶色」レベルになることがあります。これが、数日間、時には1週間以上も続くのです。
冬の時期になると毎朝、まず世界の大気汚染の様子がわかるサイトでその日のAQI値をチェックする習慣がついています。「IQAir」や「AirVisual」といったアプリを使う人も多いです。数値が200を超えていれば、その日は外出時間を最小限にするようにしています。
ハノイの大気汚染の主な原因

ハノイの大気汚染がここまで深刻になった背景には、複数の原因が複雑に絡み合っています。急速な経済発展と都市化の過程で様々な汚染源が増え続けていることが根本的な問題です。具体的な原因を見ていきましょう。
大量のバイクと古いエンジン

ハノイ人がよくいうこんなジョークがあります。
Tắc đường là đặc sản của Hà Nội.
「交通渋滞」はハノイの名産品だ。
ハノイ名物「交通渋滞」というぐらい、ラッシュ時の交通渋滞はひどく、排気ガスだらけの道路は地獄ですが、その時間帯を除けばそこまで、実は大気汚染は気になりません。
ハノイの街を歩くとすぐに気づくのは、信じられないほどのバイクの多さです。公式データによると、ハノイ市内には約690万台のバイクと110万台の自動車が走っていると言われており、人口800万人の都市としては驚異的な数字です。

多くのバイクは旧式のエンジンを搭載しており、適切なメンテナンスも行われていないことが多いです。排ガス規制も日本や欧米に比べて緩いため、一台あたりの排出ガスの量も多いのが現状です。特に朝夕の通勤・通学ラッシュ時には、主要な道路が文字通りバイクの洪水となり、排気ガスで道路が霞んで見えることもあります。
私が住むハノイ中心部の大通りでは、特に朝8時から9時の間は道路を渡るたびに目がしみるほどの排気ガスを浴びることになります。いっときは電動バイクも増えましたが、中国製の粗悪なバッテリーが突如燃え上がる火災が多発したため、現在多くのハノイのアパートでは電動バイクの駐輪が禁止になっています。
大気汚染対策として、ハノイ市は2030年までに旧市街でのバイク使用を制限する計画を打ち出していますが、公共交通機関の整備が追いついておらず、実現への道のりは険しいと言わざるを得ません。
建設ラッシュによる粉塵
ハノイは今、空前の建設ブームの真っ只中にあります。市内のあちこちで高層ビルやマンション、道路、地下鉄などの建設工事が行われており、それに伴って大量の粉塵が発生しています。
特に気になるのは、建設現場での粉塵対策の不十分さです。日本では当たり前の散水や防塵シートの使用が徹底されておらず、風が吹くと工事現場から舞い上がった土埃が街中に広がります。
私の自宅の近くでも、現在でもいくつも高層マンションが建設され、常に何かしらの工事が進行中です。窓を開けると数時間で家具にうっすらと埃が積もるほどで、毎日掃除をしても追いつかない状況です。
また、建設車両が工事現場から出るときに、タイヤについた泥を落とさずに公道に出ることも多く、それが乾燥して道路上の粉塵となって舞い上がるというサイクルも問題となっています。
郊外の工場・リサイクル施設・焼畑
ハノイ市を取り囲む郊外には多くの工業団地があり、そこからの排煙も大気汚染の大きな原因となっています。特に風向きによっては、これらの工業地帯からの汚染物質が市内に流れ込んでくることがあります。
特に問題なのは、環境保護規制に従った排気ガス処理システムが整っていないリサイクル施設です。こうした施設では、プラスチックや金属の処理過程で有害物質が大気中に放出されることがあります。
農村部では、稲わらを焼却する習慣があり、これが秋から冬にかけての大気汚染を悪化させる一因となっています。10月から11月にかけて、ハノイ周辺の農村で一斉に稲わらが焼かれると、市内にまで煙が流れてくることがあります。
また、家庭でのゴミの焼却も問題視されています。適切なゴミ処理システムが整っていない地域では、家庭ゴミを燃やして処分する習慣が残っており、これも大気汚染に寄与しています。

ベトナムではゴミの分別という概念がなく何でもかんでも燃やします
乾季と風のない気候条件が悪化要因に

ハノイの大気汚染が特に悪化するのは、11月から翌年2月の冬季です。この時期は湿度が高く、風が弱いため、空気中の汚染物質が拡散せず、地表近くに滞留しやすくなります。
冬季には大気の逆転現象も頻繁に発生し、これが汚染物質を地表付近に閉じ込める結果となります。地表付近の冷たい空気の上に暖かい空気の層ができると、汚染物質が上空に拡散せず、スモッグとなって街を覆います。
私の経験では、1週間以上まったく風が吹かない日が続くと、日に日に空気が悪化していくのを肌で感じます。特に朝方は湿度も高く、汚染物質が霧のように街を覆うことがあります。
一方で、春から夏にかけては風が強く、雨も多いため、比較的大気の状態は良好です。これらの気象条件が汚染物質を洗い流し、空気をきれいにしてくれるのです。
ハノイでも年に数日、透き通るような青空が見られることもあります。下のポストは8月のもの。
これらの様々な要因が複合的に作用し、ハノイの大気汚染を悪化させています。経済発展と環境保全のバランスをどうとるかが、ハノイにとっての大きな課題となっています。
この状況を改善するためには、交通システムの見直し、クリーンエネルギーへの転換、建設現場での粉塵対策の徹底など、多方面からのアプローチが必要です。ベトナム政府も問題の深刻さを認識しはじめており、徐々に対策を講じ始めていますが、焼石の水のような気がしています。
ハノイの大気汚染がひどくなる時期と傾向
ハノイは北部に位置し、四季があるベトナムの首都です。大気汚染の状況も季節によって大きく変動します。特に冬季に深刻化する傾向があり、季節ごとの特徴を理解することが対策を立てる上で重要です。
季節による変動と最悪の時期
ハノイの大気汚染が最も深刻になるのは、11月から翌年2月の冬季です。この時期はハノイの気温が下がり、湿度が高く霧が発生しやすい条件が重なります。冷たい地表付近の空気の上に暖かい空気層ができる大気の逆転現象が起こりやすく、これが汚染物質を地表近くに閉じ込める結果になります。

実際に私が体感したハノイの四季と大気汚染の関係はこうです:
- 春(3〜4月):徐々に空気が改善し、比較的過ごしやすい。ただし、まだ霧や靄が発生することも。
- 夏(5〜9月):頻繁なスコールが空気をきれいにしてくれるため、年間を通して最も空気が良い時期。暑さは厳しいものの、空の青さを実感できる数少ない季節。
- 秋(10月):気温が下がり始め、雨も少なくなる過渡期。徐々に大気汚染が悪化し始める。
- 冬(11〜2月):最も大気汚染が深刻化する時期。雨がほとんど降らず、風も弱いため、汚染物質が滞留しやすい。
特に12月から1月にかけては、AQI値が連日200を超える日が続くこともあります。2019年12月には、AQIが300を超える「危険」レベルの日が1週間以上続いたこともありました。

一日の中でも変化する大気汚染レベル
ハノイの大気汚染は一日の中でも時間帯によって変化します。通常のパターンとしては:
- 早朝(5〜7時):前日からの汚染物質が滞留し、霧と混ざり合って最も汚染度が高い時間帯になることが多い。
- 午前中(8〜11時):太陽が昇り気温が上昇するにつれて、徐々に改善。
- 午後(12〜16時):一日の中で比較的良好な時間帯。
- 夕方から夜(17〜23時):通勤時の交通量増加に伴い再び悪化。
- 深夜(0〜4時):交通量は減るが、気温低下により汚染物質が地表近くに滞留。
この傾向を知っておくと、外出する時間帯を選んだり、窓を開ける時間を決めたりする際に役立ちます。私自身も、朝のランニングは汚染がひどい日には諦め、代わりに午後の比較的空気が良い時間帯に行うようにしています。
以下は朝6時ごろのポスト
経年変化:年々悪化している現状
残念ながら、ハノイの大気汚染は長期的に見ると悪化の一途をたどっています。私が10年前に初めてハノイに来たときと比べると、明らかに状況は深刻化しています。

2015年頃までは、冬でも比較的空気がきれいな日もあり、青空が見える日も少なくありませんでした。しかし、2020年代に入って、大気汚染は深刻さを増しています。2025年の冬はほぼ毎日視界が悪い日が続きました。
コロナ禍の2020年には一時的に改善が見られましたが、経済活動の再開とともに再び悪化傾向にあります。都市の拡大、自動車やバイクの増加、工業化の進展に伴い、今後も悪化が懸念されます。
ベトナム政府も問題の深刻さを認識し始め、対策を講じ始めていますが、効果が現れるまでには時間がかかるでしょう。この10年の変化を見ていると、自分自身で対策を講じることの重要性を痛感します。
大気汚染が最も深刻な冬季に旅行や長期滞在を計画している方は、特に注意が必要です。できれば春や夏の時期を選ぶか、しっかりとした対策を準備することをお勧めします。
ハノイに実際に住んでみて大気汚染の影響はどうか

私はハノイに2015年から、かれこれ10年長期滞在しています。それで実際に住んでみて大気汚染の影響はどうなのか、その辺りのリアルな情報をシェアしたいと思います。
原因不明の体調不良と咳
ハノイに住んで感じる最も直接的な健康への影響は、呼吸器系の症状です。私を含め多くの在住者が、大気汚染がひどい日には以下のような症状を経験しています:
- 喉の痛みや不快感:外出後に喉がイガイガする感覚
- 咳や痰:特に朝起きたときに痰が絡むことが増えた
- 目の刺激や充血:外出時に目が痛くなったり、赤くなったりする
- 頭痛:長時間外出した後の頭痛
- 疲労感:原因不明の体のだるさ
体調不良には大気汚染だけが原因ではなく、ベトナム北部特有の低気圧など気候の要素も影響しているかもしれません。実際、常夏のホーチミンの人がハノイに引っ越してくると大体みんな体調を壊します。
咳止めには、旧市街にある東洋医学の生薬が売られている通りで売られている秘伝の咳止め薬を用いています。これが、意外とよく効くのでびっくりです。
マスクが手放せない生活

ハノイでの生活で最も目に見えて変わったのは、マスク文化です。コロナ禍以前から、多くのハノイの人々はマスクを着用していました。ただし、その多くは交通排気ガスや埃から守るための簡易的な布マスクでした。
現在では、PM2.5対応の高性能マスクが一般的になってきています。3M社のN95マスクやケンブリッジマスクなど、粒子状物質を効果的にフィルタリングできるものが人気です。
私の場合、バイクに乗る際は必ずマスクを着用します。一応、AEONで売られているPM2.5対応のマスクをしていますが、気休めのような気がしています。でも、つけないよりかはマシかなというくらいです。
ベトナム人の中には、おしゃれなマスクカバーを付けたり、カラフルなデザインのマスクを選んだりして、ファッションアイテムとして楽しんでいる人も見かけます。若い女性の間では特に、UVカットと大気汚染対策を兼ねた全顔覆いタイプのマスク(フェイスマスク)も人気です。
「マスク忘れた!」と慌てる感覚は、財布や携帯を忘れたときと同じくらい焦るものになっています。外出する際には必ず複数のマスクを持ち歩き、汚れたら交換するのが習慣になっています。
でも実は、そこまで気にしていない
確かに、冬の時期の視界の悪さにはゾッとしますが慣れてしまえばこんなものかなという気にすらなります。また、夏になればスコールも多く、空気を綺麗に洗い流してくれるような気がして、気持ちの良い天気も多いのも事実です。

またハノイ市民はどんなに空気が悪かろうが、屋台でお茶を飲んだり、食事をしたりするのが大好きです。
埃っぽい路上でも、まったりできるのがハノイの良さかなと、僕は個人的に思っています。

ハノイ旅行・移住者がとるべき大気汚染の対策
ハノイを訪れる旅行者や、これから移住を検討している方のために、大気汚染から身を守るための具体的な対策をご紹介します。事前の準備と現地での心がけで、ハノイ滞在をより快適で健康的なものにしましょう。
高性能マスクの選び方と利用法
ハノイ滞在に高性能マスクは必須アイテムです。一般的な布マスクや不織布マスクでは、PM2.5などの微小粒子をほとんど防ぐことができません。以下のようなマスクを選びましょう:
- N95/KN95規格のマスク:粒子状物質を95%以上フィルタリングできる
- Cambridge MaskやVogmaskなどのデザイン性と機能性を兼ね備えたマスク
- 3Mの防塵マスク:価格が手頃で高い効果が期待できる
特に冬季(11月〜2月)の滞在では、最低でも1日1枚のペースでマスクが必要になります。旅行の計画に合わせて十分な枚数を持参することをお勧めします。
マスクの効果を最大限に発揮するためには、顔にしっかりとフィットさせることが重要です。隙間があると、そこから汚染された空気が入り込んでしまいます。また、マスクが湿ったり、明らかに汚れたりしたら交換しましょう。
空気清浄機の必要性
もしハノイに移住されるのであれば、空気清浄機を買われることをお勧めします。
ハノイ市内のショッピングモールや家電量販店では、日本製を含め様々なタイプの空気清浄機が販売されています。

効果的な空気清浄機選びのポイント:
- HEPAフィルター搭載のもの
- 部屋の広さに適したサイズ(小さすぎると効果が不十分)
- フィルター交換のしやすさ
空気清浄機を使用する際は、窓やドアをしっかり閉めることが大切です。開けたままでは効果が大幅に減少します。

と言いつつ、うちでは湿気が籠ることを嫌って、窓を開けてることが多いんですよね。
アプリで汚染状況をチェックする習慣
ハノイでは、その日の大気汚染レベルを確認する習慣をつけることが重要です。以下のようなアプリやウェブサイトが役立ちます:
- AirVisual:世界中の大気汚染情報をリアルタイムで提供
- World Air Quality Index:詳細な空気質データと予報を提供
- PAMAir:ベトナム国内の大気汚染情報に特化したアプリ
これらのサイトやアプリを使えば、現在の汚染レベルだけでなく、今後数時間の予測も確認できます。私は毎朝起きたらすぐにサイトでその日のAQI予報をチェックし、外出計画や持ち物を調整しています。
AQIが200を超える「非常に健康に良くない」レベルの日には、できるだけ外出を控えたり、外出時間を短くしたりすることをお勧めします。どうしても外出が必要な場合は、空気が比較的良好な午後の時間帯を選ぶと良いでしょう。
滞在するエリア・宿の選び方
ハノイ市内でも、エリアによって大気汚染の程度に違いがあります。一般的に、西湖(タイホー)周辺や郊外の高台のエリアは、市中心部よりも空気の質が良い傾向にあります。
逆に、旧市街や主要幹線道路沿いは交通量が多く、大気汚染が最も深刻化しやすい地域です。特に長期滞在を考えている方は、住居選びの際にこうした点も考慮すると良いでしょう。
宿泊施設を選ぶ際のポイント:
- 高層階の部屋は地上階よりも空気が良い傾向がある
- 窓の気密性が高い施設が望ましい
- 空調システムの質も重要な要素
また、旅行者の場合は、大気汚染が深刻な冬季を避けて、8月〜10月の時期にハノイを訪れることをお勧めします。特に夏季(6月〜8月)は雨季と重なるため、雨で空気中の汚染物質が洗い流され、比較的空気がきれいになります。
ハノイ以外のベトナムの大気汚染状況
ハノイの大気汚染の深刻さをお伝えしてきましたが、ベトナムの他の地域ではどうなのでしょうか。実はベトナム国内でも地域によって大気の状態は大きく異なります。ベトナムは南北に長い国なので、気候だけでなく大気汚染の状況も地域によって全く違います。
ホーチミン市との比較

ベトナム南部の経済都市ホーチミン市も大気汚染の問題を抱えていますが、ハノイほど深刻ではありません。年間を通したAQIの平均値は、ハノイが100前後なのに対し、ホーチミン市は60〜70程度と推定されています。
ホーチミン市が比較的良好な理由としては以下が考えられます:
- 気候条件:熱帯モンスーン気候で、年間を通して雨が多い
- 地理的要因:平坦な地形で風の流れが良い
- 工業地帯の配置:主要な工業地帯が市街地から離れている
とはいえ、ホーチミン市も決して空気がきれいとは言えません。特に乾季(11月〜4月)には大気汚染が悪化し、AQIが150を超える日もあります。バイクの数も多く、交通渋滞に伴う排気ガスの問題は深刻です。
私の体感では、ホーチミン市の方が呼吸がラクで、空が青く見える日が圧倒的に多いです。ホーチミン市では喉の痛みや目の刺激をほとんど感じません。
ダナンなど中部都市の状況

ベトナム中部の都市、特にダナンやホイアンなどの観光地は、大気汚染の心配がありません。これらの都市では、年間を通してAQIが50前後と、「良好」から「普通」のレベルを維持していることが多いです。
中部都市が空気がきれいな理由:
- 海に面している:海からの風が汚染物質を分散させる
- 人口密度が低い:ハノイやホーチミン市と比べて人口が少なく、交通量も少ない
- 工業発展が限定的:重工業が少ない

私が訪れたダナンやホイアンでは、普通に空気が綺麗でした。マスクは不要、気候が自分にあっていたせいか、その時期に崩していた体調が嘘のように良くなりました。
海沿いのリゾート地であるニャチャンやフーコック島などは、さらに空気がきれいです。ベトナムでぜひ行くべきおすすめスポットです。

ベトナム政府の取り組みと今後の見通し
ベトナム政府も大気汚染問題の深刻さを認識しており、近年は対策を強化しつつあります。具体的な取り組みとしては:
- 環境保護法の改正:2020年に改正され、環境基準の厳格化が図られた
- 公共交通機関の整備:ハノイでは地下鉄建設が進行中(2022年に部分開通予定だったが遅延中)
- 電気バイクの普及促進:税制優遇などを通じて電動バイクへの移行を促進
- 工場への排出規制強化:違反企業への罰則強化
しかし、急速な経済発展と環境保全のバランスをとることは容易ではありません。特にハノイでは、都市開発のペースが環境対策を上回っている印象があります。
しかし、最近ではハノイ市の間でも、1部の路線で市バスの電気自動車化が進んでいます。また2023年ごろから、特にベトナム国産電気自動車、VinFirstのタクシーや自家用車を街でもよく見かけるようになって、排ガス問題への取り組みが進んでいます。
ただ、現実的には短期間での劇的な改善は難しく、当面はハノイの大気汚染と共存していく必要がありそうです。特に冬季の汚染対策は個人レベルでも重要になります。
まとめ:ハノイの魅力と大気汚染の現実
ハノイは、古き良きベトナムの伝統と、急速に発展するモダンさが融合した魅力あふれる都市です。旧市街の狭い路地、フレンチコロニアル建築の洗練された街並み、湖畔のカフェ、そして何より温かく親切な人々の笑顔。食事も安くて美味しく、暮らしやすい街であることは間違いありません。
しかし、この記事で詳しく見てきたように、ハノイには深刻な大気汚染という現実も存在します。特に11月から2月の冬季は、汚染が最も悪化する時期で、健康への影響も無視できません。これはハノイの急速な発展の「負の側面」とも言えるでしょう。
ハノイの大気汚染については、以下のポイントを覚えておくと役立ちます:
- 最も汚染がひどい時期は冬季(11月〜2月)
- PM2.5が主な汚染物質で、健康への影響が大きい
- AQIアプリで日々の汚染状況をチェックする習慣が大切
- 高性能マスクと室内用空気清浄機が効果的な対策になる
- 中部や南部の都市は比較的空気がきれい
旅行者としてハノイを訪れる場合は、できれば8月〜10月の比較的空気がきれいな時期を選ぶことをお勧めします。冬に訪れる場合は、適切なマスクの準備などの対策が重要です。
長期滞在や移住を考えている方は、年間を通した大気汚染の変動を理解し、特に冬季の対策をしっかり立てることが健康維持のカギとなります。空気清浄機の設置、高性能マスクの常備を忘れないでください。
私自身、10年間ハノイに住んでいて、大気汚染は確かに生活の質を下げる要因ではありますが、それでもなお、ハノイの持つ多くの魅力や生活の豊かさが、その短所を上回っていると感じています。

大気汚染という課題を知ったうえで適切に対策を講じれば、ハノイでの生活を十分に楽しむことは可能です!
それでは、「Hẹn gặp lại ở Hà Nội!」(ハノイでまたお会いしましょう!)




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