ベトナムの街を歩いていて、よく思うのは、本当にカフェが多いということです。
フランスの統治下にあったことも影響していると思いますが、ベトナムではカフェ文化がしっかり根付いています。でも、ここで出されるコーヒーは、ほぼベトナムコーヒーです。
ベトナムのカフェにて
ところでコーヒー生産地と言えば、ブラジルやエチオピアなど、南米やアフリカのイメージが強いですが、
実は、ベトナムがブラジルに次いでコーヒー生産量世界第2位だったことをご存知でしょうか。あまりそんなイメージはないですが、ベトナムも世界有数のコーヒー生産国なんです。
意外ですよね。
でも、みなさん、日本でベトナムコーヒーを飲む機会って、これまでそんなにあったでしょうか?
市場でそんなに出回っている印象って、あまりないですよね。
でも、わたしたちは以外なところで毎日ベトナムコーヒーに出会っていたのかもしれないのです。
- コーヒー生産量世界第2位なのに、なぜベトナムコーヒーは日本であまり流通していないのか。
- なぜベトナムが世界第2のコーヒー生産国になったのか。
この記事では、こういったテーマについて書いていきたいと思います。
目次
なぜベトナムコーヒーは日本であまり流通していないのか
そもそもなぜ、日本でベトナムコーヒーを口にする機会が少ないのでしょうか。
簡単に言うと、日本人が普段飲んでいるコーヒー豆と種類が違うからです。
これから少し、コーヒー豆についての専門的な話になります。
ベトナムで生産されているコーヒー豆の種類は大半がロブスタ種
商業作物としてのコーヒー豆の種類は大きく分けて2つあります。
アラビカ種とカネフォラ種(ロブスタ種)です。
日本で普段飲まれているコーヒーはアラビカ種というコーヒー豆の品種です。アラビカ種は香りが高く高品質な豆として出荷されています。
一方でベトナムで生産されている豆の品種はロブスタ種です。
ロブスタ種は香りや酸味に乏しく、苦味とコクが強いという特徴があります。
そのため、ドリップコーヒーのように淹れてもあまり美味しくありません。
ベトナムで普段飲まれている、「ベトナムコーヒー」は非常に濃い味がします。
それを練乳や氷で溶かして、ちびちび飲むのがベトナム流です。
ベトナムコーヒーはいわゆる「ドリップコーヒー」の豆とは種類が異なるため、日本市場ではあまり出回っていません。
ロブスタ種とはカネフォラ種の代表的な品種で、知名度が高いためカネフォラ種の代名詞になっています。
ベトナムでロブスタ種が生産されている理由
アラビカ種もロブスタ種もどちらも熱帯で育つ植物なので、暖かい地域で栽培されています。しかし、以下の特徴があります。
| 品種 |
アラビカ種 |
ロブスタ種 |
| 味 |
香り高く美味しい |
酸味が少なく苦い |
| 病気 |
弱い |
強い |
| 暑さ |
弱い |
強い |
| 寒さ |
強い |
弱い |
| 栽培地 |
高地 |
低地 |
ベトナム中南部は熱帯気候であるため、暑さや病気に強く、低地で栽培できるロブスタ種が栽培されています。
ベトナム中高原や南部には大規模な農園がいくつもありますが、ベトナムで生産されているコーヒーの大半がロブスタ種です。
ベトナムでもアラビカ種は栽培されていますが、標高が低いため上質なコーヒー豆を作ることができていません。
比較的涼しい中部のダラット高原や北部の山岳地方では、アラビカ種も栽培されています。
アラビカ種はベトナム国内のコーヒー生産量のわずか4%程度ですが、それでも世界のアラビカ種の生産量で世界第15位なのでそこそこの生産量だということがわかりますね。
北部地域ではアラビカ種を作る上での必須条件である標高の高さはあるものの、高品質のスペシャリティコーヒーは生産されていません。
なぜベトナムは世界第2位のコーヒー豆生産国になっているのか
ベトナム国内での消費という点で言えば、冒頭のところで書いたように都市部ではしっかりカフェ文化が根付いています。
ベトナムコーヒーは濃く抽出したコーヒーの下にコンデンスミルクをしいて、おしゃべりしながらチビチビ飲むというのがベトナム流です。
しかし実際のところ、国民の大半は農村で暮らす農民で、日常的に家庭ではコーヒーよりもお茶のほうが好んで飲まれています。
ベトナム国内だけでの消費は、実はそこまで多くありません。
さらに、ベトナムで生産されているコーヒー豆の品種は大半がロブスタ種です。そのためアメリカ、ヨーロッパまた日本などで大量消費されるコーヒー豆(アラビカ種)として輸出されているわけではありません。
では、味や品質の劣るロブスタ種のどこに需要があるのでしょうか。
インスタントコーヒーや缶コーヒーの原料として大量生産されている
コーヒー業界には2つの分野があります。
- スペシャルティコーヒー:品質や味や香りの良さなどによって評価される。産地は重要な要素。
- コモディティコーヒー:質ではなく、目覚まし効果などの「コーヒー」としての定義。産地も生成方法も重要ではない。
コーヒー好きの人がが普段、喫茶店で飲んだり、コーヒー焙煎店で購入してご自宅で飲むこだわりのコーヒーはスペシャルティコーヒーの分野にあたります。
一方、インスタントコーヒーや、缶コーヒーはコモディティコーヒーにあたります。インスタントコーヒーや、缶コーヒーには、そこまでの品質は求められません。仕事場や出先で、シャキッとしたいときに飲まれます。
大量消費、大量生産されるため、質や生産地よりも、低コストでの生産のしやすさが重視されます。
ロブスタ種は味や品質はアラビカ種に劣りますが、病気や暑さに強く生産しやすいため、コモデティコーヒーとして工業用に生産するのに都合の良い品種になります。
ベトナムで生産されているロブスタ種の大半はインスタントコーヒーや缶コーヒーの原料として大いに需要がある
ベトナム国内でも家庭ではチュングエンというメーカーのG7というインスタントコーヒーが国民的大人気で(とても甘〜いミルクコーヒー。※ブラックもある)大量消費されています。
ベトナムで最もポピュラーなインスタントコーヒー
また、世界最王手のネスレも拠点をおいて生産しています。
ベトナムは社会主義国ですが、1986年のドイモイ政策によって経済が改革開放路線に向かったところから、企業によるコーヒーの大量生産に力が入れられてきて、現在のコーヒー豆生産量第2位の地位を築いてきました。
日本でお目にかかることは少ないベトナムコーヒーですが、実はインスタントコーヒーや缶コーヒーという形でわたしたちにとって身近な存在だったんですね。
まとめ
- ベトナムで生産されているコーヒー豆の大半は味や品質の劣るロブスタ種で、ドリップ用のコーヒーとしては日本で飲まれていない。
- インスタントコーヒーや缶コーヒーの原料として世界中に輸出されていて、大規模農園がいくつも経営されている。
みなさんもぜひ一度機会があれば、ベトナムコーヒーを味わってみてください。これはこれで一つのカフェ文化、ジャンルとして面白いですよ。
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